05/07/20
05/07/21
■ “褥創部”の正しい検体採取方法
【質問】
 はじめて質問させていただきます。私は650床の自治体病院で細菌検査担当の臨床検査技師です。院内の「褥創対策委員会」の一員でもあります。私どもの病院では, 認定看護師を中心にチームを組んで回診を行い, 徐々に成果を上げつつあるところです。この度, 「褥創対策委員会」では, 院内向けにマニュアルを作成することになり, 検査部門からは“褥創部の検体採取方法を明記すべし”とのことでした。褥創部からの採取は, “洗浄後に発赤などの炎症部から採取すべき”と考えるのですが, 現状を知りたいのだから, “膿をそのまま培養せよ”との医師もいます。いかがなものでしょうか。エビデンスに基づいた正しい採取法についてお教え願いたいのですが, よろしくお願いいたします。

【回答】
 “褥創部を洗浄した後に, 炎症部位から培養検体を採取する”方法が褥創部からの最も推奨される検体の採取方法です。全米微生物学会 (ASM) の刊行する“Manual of Clinical Microbiology ”には材料採取法について以下のように記載されています。

(1) 綿棒での採取は推奨されませんが, 他の採取法ができない場合には採取前に滅菌生理食塩水で褥創表面を綺麗に洗浄して, 適切な採取場所を綿棒で擦過します。綿棒で採取した検体は好気性菌のみ培養対象となります。

(2) 褥創表面を綺麗に洗浄した後のbiopsy 採取または吸引液材料が最も診断的価値があります。この採取材料では嫌気性菌も培養対象となります。

 「膿をそのまま培養せよ」の指示は誤りです。褥創に限らず, 開放性膿を洗浄せずにそのまま採取した場合には, 皮膚表面汚染菌が採取時に混入します。膿を形成している原因菌は実質組織に最も近接した部位で増殖感染していますので, 排膿部を検査するより, 排膿部を洗浄し, それでも組織に残っている細菌が感染の原因菌であるという考えからです。

(琉球大学・仲宗根 勇)


【質問者からのお礼】
 早速の回答ありがとうございます。感覚的にはなんとなくわかっているつもりでいるのですが, エビデンスがわからず困っておりました。本当にありがとうございました。今後とも宜しくお願いいたします。


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