04/10/04
■ 純培養後のコロニーの大きさの変化
【質問】
 はじめまして。製薬会社で動物の微生物検査を担当している者です。動物の咽頭粘液を血液寒天培地に塗抹後, 37℃, 48時間培養し, 肺パスツレラ菌 (Pasteurella pneumotropica) の検査をしています。この検査でカタラーゼ反応 (+), オキシターゼ反応 (?) の陰性桿菌を示すコロニー (色調: 灰白色, 大きさ: 2 mm) を肺パスツレラ菌の被疑菌として選択します。このコロニーについて, 同定するために純培養したところ, コロニーの大きさが1 mm以下の非常に小さなコロニーになってしまいました。しかし, 先程あげた大きさ以外の性状は同じなので, 間違いなくこのコロニーを純培養していると思います。ちなみに, このコロニーはスライド凝集反応で肺パスツレラ菌は否定されていますが, 同定はできませんでした。“純培養でコロニーの大きさが変わってしまう原因を教えて下さい”。

【回答】
 集落の大きさは様々な要因によって影響を受けます。ご質問では純培養に使用された培地の種類が記載されていませんので, 明確な回答は難しいのですが,もし咽頭粘液の分離培養に使用された培地とは異なる培地を使用されたのであれば,集落の大きさが極端に変化することは当然あると思います。例えば,人畜共通感染症を引き起こすPasteurella multocidaの場合には,血液成分が含まれるチョコレート寒天培地や血液寒天培地などには旺盛に発育し,ご質問のような2ミリ程度の集落を形成することがあります。しかし,血液が添加されていない培地では極端に発育が悪くなります。これはパスツレラ菌の栄養要求性の問題です。

 一方,分離培養と同じ培地に純培養された場合ですが,極端に集落が小さくなることは通常は考えられません。培養環境や温度,時間などが同じであるとするならば,培地のロット差の問題になるかと思います。市販の生培地を使用されているのであれば, メーカーで良く品質管理されていますので大きな差はないと思います。もし生培地を購入されているのであれば, 一度メーカーに問い合わせてみてはいかがでしょうか。血液寒天を自家調整されている場合には,変動因子はさらに多くなります。添加する血液や基礎培地のロット差あるいは培地作製後の培地の水分量なども影響します。また一般的に, 作製直後の培地が最も発育が良好であり,時間の経過とともに発育支持力は低下するといわれています。程度の差はありますが,新しい培地と古い培地とでは集落の大きさが異なることはあり得ます。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


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