05/12/09
05/12/12
■ 化学療法 (抗ウイルス剤や抗がん剤) と血液培養
【質問】
 血液培養検査のタイミングとして, 化学療法剤投与前が原則であると, 臨床検査の教科書に書いてあったのですが, 抗生物質以外の, 例えば抗ウイルス剤や抗がん剤のような化学療法剤も血液培養の結果に影響がありますか??? 一部の文献で菌発育阻害物資を含む薬剤もあると書いてあったのですが, 化学療法剤のほとんどにその阻害物質が入っているのか分かりませんでした。また, 当医院では“レズンが入った培養ボトル”を使用しているのですが, これらの化学療法剤も抗生物質のように中和吸着できるのでしょうか??? 御回答よろしくお願いします。

【回答】
 全自動血液培養装置BACTEC 9000シリーズには, 好気性培養用ボトル, 嫌気性培養用ボトル, 小児用ボトルの3種類に, 抗菌薬吸着能をもつレズン粒子が添加されています。それぞれのボトルに添加されているレズン粒子は, 褐色の陽イオン交換樹脂と白色の非イオン性樹脂で構成されています。陽イオン交換樹脂自体は陰性に荷電しており, 主に培養液中に存在する陽性に荷電した分子を吸着します。また, 分子内に疎水性の部分を持ち, 陰性に荷電した分子や荷電していない分子は分子間力によって吸着されます。レズンは40〜50Åの吸着口を持つ多孔性粒子であり, 非常大きな表面積を持ち, 振盪培養をすることで効率よく培養液中から抗菌薬を吸着除去します。レズンは抗菌薬のみを特異的に吸着するものではなく, 電気的, 物理的な機構によって溶液中の分子を吸着するため, 抗菌薬以外の分子に対しても同様な働きを示すものと考えられます。

 抗がん剤の中で, actinomycinやchromomycin, quinoxaline系抗生物質, anthracycline系抗生物質など, DNAに作用するものに細菌の発育を阻害する薬剤があります。これらの薬剤が投与されている場合, 通常の抗菌薬と同様な注意が必要である思われます。

(日本ベクトン・ディッキンソン・小林 郁夫)
【質問者からのお礼】
 丁寧な説明, ありがとうございました。文献については申し訳ありませんでした。

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