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【質問】
大学病院の細菌検査室に勤務する■■です。
先日, 喀痰検体で墨汁染色の依頼がありました。墨汁染色が髄液検体以外で依頼されたのは初めてだったので戸惑いました。クリプトコッカス感染症では肺症状もあるので,
とりあえず抗酸菌培養で使用するスプータザイムで喀痰をさらさらにし, 遠心した沈渣と墨汁で染色してみましたが・・・。この方法でよかったでしょうか。実際どのような方法で実施されてるのか教えて下さい。よろしくおねがいします。
【回答】
一般的に墨汁法は脳脊髄液中のCryptococcusの確認試験 (莢膜の証明)
に用いていますが, Cryptococcusによる呼吸器感染症もありますので,
まれに喀痰材料でも利用することがあります。即ち, 喀痰のグラム染色で濃染された酵母と二重リング状の莢膜様細胞を認めた場合は,
墨汁法にて確認することがあります。その場合は, スライドグラス上に喀痰1滴
(1白金耳程度) を載せ, 少量の墨汁を加えて混和した後, カバーグラスを架けて100_400倍率乾燥系レンズで鏡検します。ただし,
喀痰の場合は多種の細胞が混在しますので観察も困難であり, 多数の酵母が含まれる検体が有利になります。いずれにしても,
グラム染色との併用が望ましく, 総合的に判断することが大切と考えます。ちなみに,
Cryptococcusの培養集落では莢膜形成が見られないことが多く, そのためにも検体直接検査
(墨汁法など) が重視されます。私論ですが, 墨汁法は莢膜の証明に利用することで,
細胞自体を染色するものではないと考えておりますので「墨汁染色」の言葉には若干抵抗感を持っています。いかがでしょうか。
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