05/12/12
■ 喀痰吸引チューブの細菌検査結果
【質問】
 当院の感染対策マニュアルの改訂をするために,喀痰吸引チューブの浸漬液 (0.1%逆性石鹸液) の細菌培養を実施しました。

[目的]現在は喀痰吸引チューブは喀痰などを吸引する度に, 0.1%逆性石鹸液に浸漬して同じチューブを1日使用しますが,喀痰吸引チューブは喀痰を吸引する度に廃棄し, 新しいチューブにしたい。

[検体]浸漬前と浸漬後を合わせて20検体。

[検査結果]浸漬後の1検体からP. aeruginosaS. maltophiliaを検出しました。P. aeruginosaは喀痰から発育していますが,S. maltophiliaはこの患者さまからは分離されていません。

[質問]S. maltophiliaが分離されたので,病院感染と考えると, 喀痰吸引チューブは使用毎に交換したほうが良いのではないかと考えますが,“病院の経済的負担”を考慮すると交換しない方がよいのかと考えます。どのように考えるべきなのか,ご指導をお願いします。

【回答】
 貴君は, 喀痰吸引チューブを逆性石鹸で浸漬した後, 再使用している現状には問題があると「仮説」をたて, その仮説を確証すべく検査を行った。検査の内容, 詳細はともかく, 患者の喀痰からは検出されなかった菌種が見つかったという結果から, 貴君は喀痰吸引チューブの再使用はしないほうが良いという結論に至った。しかし, “病院の経済的負担”を考慮すると交換しない方がよいのかと考えます・・・このような検査結果と結論を得た貴君が何故, 最後の部分のような考えに至るのか, 私には理解できないのです。病院の経済的負担について最終決定するのは病院長ではないのですか??? 病院における貴君には, 貴君のもつ専門的な技術と知識を提供するという責務が求められているのではないのですか??? 病院長ではない貴君が, “病院の経済的負担”を考慮して, 貴君の得た結論を自分に強いて“闇に葬る”という考え方が理解できないのです。雪印でも, 最近では「耐震強度偽造事件」の民間検査機関でも, 現場の意見が最終意志決定者に正しく伝わらず, 倒産あるいは倒産間近の状況にあります。もし貴君が貴君の意見を闇に葬り, P. aeruginosaの患者がS. maltophiliaも排菌するようになったら, 貴君の心は痛みませんか??? 道義的責任を感じませんか??? 貴君の立場は・・このような結果を得た・・だから喀痰吸引チューブの再使用は直ちに止めるべきです・・1本1本交換する経費負担も問題でしょうが, 一度問題が明るみにでれば, それ以上の経費負担が必要になる筈です・・医療機関としてやらなければならないことは, いくら経費がかかっても, 手間ひまかかっても, やらなければならないと思います[http://www.hosp.u-ryukyu.ac.jp/labo/koe/glove.html]・・と, 専門家として主張することだと思います。それでも病院長が“やらない”と決定した場合には, 病院長は“確信犯として, 道義的, 社会的責任を含め, 腹をくくった”ということです (だから, 病院長は高給取りなのです)。臨床検査技師として, 自分に求められていること, 自分として果たさなければならない (道義的あるいは倫理的) 責任をしっかりと認識してください。

(琉球大学・山根 誠久)


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