05/01/17
■ この化膿巣の原因菌はどれですか???
【質問】
 お世話になります。先日形成外科から, “川蟹”に挟まれた後に化膿したといって, 開放膿が提出され, 検査したところ, こんな結果になりました。

Morganella morganii (3+)
Streptococcus constellatus (3+)
Serratia sp (2+)
Klebsiella sp (1+)
Citrobacter sp (1+)

(1) この結果をどのように考えたらよいのでしょうか???

(2) 先生から「Morganella とはどんな菌か」と質問されましたが, どのように答えたらよいでしょうか。アドバイス, 宜しくお願いいたします。

【回答】
(1) この結果をどのように考えたらよいでしょうか???
 Streptococcus constellatus を除く4菌種は, すべて腸内細菌科に属する細菌であり,糞便中の細菌叢と類似しています。1種類だけなら創傷感染から分離されることも稀ではありませんが,腸内に多く存在する細菌が同一検体から4種類も検出されていますので,糞便からの感染も疑われます。侵入経路としては2通り考えられるかと思いますが,一つは受傷時の侵入で,河川水が糞便成分で汚染されていたこと。もう一つは受傷後の侵入で,乳幼児や老人介護に伴う排泄物の処理あるいは患者御自身の排便時などに糞便成分が傷口から侵入したのではないかということなどが推測されます。これに対しS. constellatus は, 主に口腔内に常在する”Streptococcus milleri” group の一種であり,カニに挟まれたのが手の指であるならば,唾液成分の傷口への侵入は十分に考えられます。本菌は膿瘍を形成しやすい性質があり,爪周囲炎などの膿からも分離されることがあります。混合感染の一つとして化膿巣形成に関与している可能性はあります。しかし全菌種とも病巣から分離されているわけですから,検出された5菌種すべてが原因とも考えられます。(3+)の菌量で分離されているMorganella morganiiS. constellatus , あるいはこれらに加えて(2+)のSerratia sp.までは,病巣中で増殖している可能性があり,治療の主たる対象になるのではないかと思います。(1+)の菌量で分離された2菌種については,付着か感染かどうかの判断が難しいと思いますが,薬剤耐性菌の場合には治療後に増加することもあるかと思います。

(2) Morganella morganii はどんな菌か???
 和名でモルガン菌といい,以前はProteus morganii と呼ばれていた腸内細菌科に属するグラム陰性桿菌です。ペニシリン系薬剤あるいは第1・第2世代セフェム系薬剤に対して自然耐性を示す多剤耐性菌ですが,それほど強い病原性は持っていないと言われています。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)

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