05/06/13
■ 継代培養で腸炎ビブリオのコロニーが変化する
【質問】
 私は, 環境や臨床において微生物を担当しているものです。これまで腸炎ビブリオ (O4:K68, TDH+) の継代培養を続けてきたのですが, 約8代目あたりから, 培地上で示すコロニーの色に変化が現れました。具体的には, TCBS培地 (日水) では典型的な培地色コロニーを示すのですが, 酵素基質培地 (クロモアガービブリオ, X-VP (日水))を用いると, いずれも乳白色コロニーを示し, それぞれの特異色コロニーに育ちません。耐熱性溶血毒 (PCR) においては問題はありません。このような例はよくあることなのでしょうか??? また, 複数継代により変異したのでしょうか??? この株を正常な姿 (元の状態) に戻すにはどのようにしたらいいのか教えていただきたいと思います。

【回答】
 酵素基質培地は特定の酵素に対してのみ発色するため, 菌種特有の酵素に対する発色酵素基質と反応させることにより菌種を同定できるというメリットがあります。しかし酵素活性は, 例え菌種固有であっても, 生物である以上100%陽性ということではなく, 例外株もあります。代表的な例としては, β-グルクロニダーゼは大腸菌に特異的な酵素ですが, 病原性大腸菌の一部 (O-157血清型など) では陰性を示します。

 質問で, 継代当初は酵素基質培地で典型的なコロニーを示していたかどうか明確ではありませんが, 初期は典型的なコロニーで, 継代により発色しなくなったのであれば, 継代により酵素活性が変化 (低下あるいは陰性化) したものと考えられます。また一方で, その菌株が継代当初より酵素基質培地に対する酵素活性をもたず, 特異的な発色を示していなかったということも考えられます。

 継代培養により性状が変化することことは一般的に知られていますので, 継代でなく適当な方法により保存することを推奨します。また正常な元の状態に戻す方法ですが, 毒素産生性や病原菌が弱毒化した場合には, 動物に接種し, 回収することによりかなり復元すると言われていますが, 生化学的性状についての情報は持っていません。

(日水製薬・三品 正俊)


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