■ 結核病室の管理 | |
【質問】
陰圧独立換気空調システムのない一般病院で, 結核菌が排菌された場合, 飛まつ拡散防止するためにどのような管理が必要でしょうか。ご指導ください。 【回答】
「換気」は, 空気感染対策のなかで最も重要なもので, 結核菌の浮遊する空気を希釈し, できるだけ早く他の新しい空気と交換するということです。空気感染対策を実施する部屋の空気交換回数は1時間に6回以上 (6ACHと書きます。6 air changes per hour), 理想的には12回以上とされています。汚染空気を1/100, 1/1000に希釈にするのに, 6ACHでは, 各々46分, 69分, 12ACHの場合なら, 各々23分, 35分かかります。「陰圧」は, 他の病室へ結核菌で汚染された空気が流れ込まないようにするためです。「空気の流れ」は, 医療従事者が患者よりも風上になるような空気の流れを病室内で作り出すことが理想的ですが, 実際にはこれはなかなか困難です。「N95マスク」は, 飛沫核の吸入を防止するために医療従事者が着用するマスクです。これを使用する場合は, 着用時の気密性確認のために, 必ずフィットテストを実施します。詳細はN95マスクを扱っているメーカーに尋ねてください。 さて本題ですが,「肺結核患者で排菌している」場合には, 基本的には結核の治療のできる施設へ搬送するわけですが, 陰圧の空気感染対策用の部屋のない施設では, それまでの期間をどう対応するかということになります。具体的には: (1) 患者を個室に収容する (他の患者から隔離する)
特に(3)の点ですが, いくつかの方法があります。 A. 個室に, 移動式のHEPAフィルター付きのアイソレータを持ち込むという方法。結核患者発生時にアイソレータを稼働させ, 陰圧と十分な換気を実施するものです。最も確実な方法です。このためには, 現在使用中の一般個室を少し改造する必要がありますので, 今すぐにできるわけではありません。しかし, 年に1例でも結核患者があるのなら, 病院に一室程度はこのような空気感染対応の病室を設置することをお勧めします。通常は一般個室として使用できます。 B. 個室に, いわゆる空気清浄機を使用する方法。これについては, 実験データはあるようですが, 実際の有効性についての確証はありません。 C. 個室に, 換気扇などを設置して空気を外へ出す方法。これもどの程度, 換気が良くなるかは不明ですし, その効果についても不明です。 ということで, 確実な方法はAしかありません。 (京都府立医大・藤田 直久) |