05/07/05
■ 結核患者の隔離と解除
【質問】
 不明熱で2ヶ月入院した時点で胃液検査で塗沫 (−), PCR (+)となり,某国立大学のマニュアルを解釈して隔離としました (隔離部屋は個室で換気扇はありますが,前室はありません)。専門施設に転院する日に状態が悪化したことにより気管内挿管となり,現在は気管切開となってます。いったんは抗菌剤により解熱しましたが, 現在再度発熱してます。

この症例に関して:
 (1) 直ちに専門施設に転院するべきか
 (2) 隔離解除の条件は
 (3) この患者に用いた機器などの消毒は他の患者の者と同じ容器でよいのか

の3つの点についてアドバイスお願い致します。

 我々ICTとしては,塗沫 (−), PCR (+) の時点での隔離は当然で,今の状態で即専門施設への転院を要する,消毒は他とは別の容器で行うべきと考えてますが, 内科サイドでは,“塗沫が陰性なので感染性は低いから厳格に扱う必要はない”との見解です。

【回答】
 まず行うことは, (1) 本当に結核であるかどうか。(2) 結核であるならば, 開放性か, 非開放性かどうか, (3) 肺結核はどうか, (4) 腸結核はどうか, などをチェックする必要があります。胃液PCRで陽性ということより, 肺結核の存在が疑われます。しかし, 塗抹検査が陰性であり, 培養の成績が不明ですので, 確定診断はできない状態です。状態の悪化があり, 気管切開がなされ, しかも感染症状があるとのことですが, 文面からはどのような疾患や病態が存在するのかを知ることができません。いずれにしても, 気管切開を必要とするような切迫した状況の存在が考えられます。

 このことより, 行うことはまず, 喀痰の塗抹, 培養検査およびPCRの検査をもう一度実施して下さい。1回だけではなく, 繰返して検査をして下さい。PCR検査は特異性や感度にすぐれた検査ですが, 死菌や汚染によっても陽性になることがあるので, 1回の検査結果のみで診断を下すのは危険です。現段階では結核とする“診断確証”が必要です。上記の検査を行い, 塗抹検査や培養検査が陽性になった場合には, 専門施設へ転院して下さい。

 (1) 現時点では, 直ちに転院する必要はありません。
 (2) 結核菌の塗抹・培養陰性およびPCR陰性の場合, 隔離解除します。
 (3) 容器の消毒は他の患者さんと区別する必要はありません。

(近畿大学・古田 格)


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