05/08/09
05/08/17
■ 嫌気性菌の炭水化物資化試験
【質問】
 いつも勉強させていただいています。私は大学で研究補助をしていますが, あるClostridium属細菌の“炭水化物資化性試験”がうまくいかず, 悩んでいます。

 実験書などを参考に, 数種類の糖類について試験しましたが, pHの酸性シフトが確認できませんでした。市販のキットも試したのですが, 菌体を各炭水化物と混合した後, 48時間嫌気条件下でインキュベートすると還元性を示す反応は確認されるのですが, pH指示薬を滴下しても酸性を示す呈色が見られませんでした。資化することが分かっている糖類をコントロールにおいていますが, それも「陽性」でないことから, 反応自体が阻害されているのではないかと思っています。そこで質問は:

(1) 還元性が見られても, それは“資化しているとはいえない”のでしょうか???

(2) 資化性テストを行う際の培地組成に“必要なもの”, また“添加してはいけないもの”がありますか??? 宜しくお願いします。

【回答】
 炭水化物からの酸産生を試験する方法についての質問にお答えします。

(1) 還元性があるとはどのようにして判断しているのでしょうか??? pH指示薬を培地に加えて, その指示薬の色が還元されて無色化してしまう現象のことを言っているのでしょうか??? もしそうなら, 糖を分解しているとは言えません。

(2) Clostridiaについてこの種の試験を行う場合には, 基礎培地としてPY (peptone yeast extract) を使用して下さい。PYの組成は比較的シンプルですが, ガス噴射法によって作るように指示されている培地です。取り扱う菌の酸素に対する感受性にもよりますが, ガス噴射装置または嫌気チェンバーがあれば, この培地による試験は可能と考えます。培地の処方は, 米国VPIの“Anaerobe Laboratory マニュアル”に記載されています。また, その他の嫌気性菌に関する専門書をみれば, 処方を知ることもできるでしょう。PY培地に, 試験する炭水化物を1%濃度に加えて, 嫌気性環境で1週間培養し, pHをpHメーターで測定して下さい。pH指示薬は還元されてうまく働きません。また, 炭水化物を加えないPY培地を試験の際に必ず“対照”に加えて下さい。もしPY培地の処方の入手がうまくいかない, 試験がうまくいかないのなら, 専門家のいる施設でのトレーニングをまず, お勧めします。通常の病院の臨床検査で用いられる糖分解用の半流動培地のような, 組成が複雑な培地ではClostridiaではうまくいかないことが多いのです。培地中に存在するN化合物を旺盛に利用する菌で起こります。

(岐阜大学・渡邉 邦友)


【質問者からのお礼】
 Clostridium属細菌の炭水化物資化性試験についてアドバイスを頂き, ありがとうございました。PY培地は一度試したのですが, pH指示薬の呈色反応しか観察せず, pHメーターでの測定はしていませんでした。ご指導いただいたように, 再度対照をおいて, pH測定による資化性試験を行いたいと思います。


[戻る]