05/06/17
05/07/05
■ 血液培養検体の扱いについて
【質問】
 毎度とても参考になるご回答を有難うございます。さて, この度, 私の勤務する病院の院内感染対策委員会で血液培養の検体採取法のマニュアルを作ることになって, さまざまなサイトを見たり, 文献を紐解いたりしているのですが, 2つほど疑問点があり質問させていただきます。この2つの疑問はものによって書いてある内容が異なるため, できれば正しい方法の根拠をお示しいただき, ご回答をお願いいたします。ご多忙のところ申し訳ありませんが, 宜しくお願いいたします。

(1) 検体をカルチャーボトルに入れる時
 ・直前に蓋を開けてそのまま注入する
 ・予め蓋を開けてゴム栓の部分を消毒し乾燥させておく

この2通りがありました。ボトルのゴム栓が製造時から無菌に保たれているなら, 1つめのやり方の方がコンタミネーションは少ないように思います。メーカーにより多少の違いはあるのかもしれませんが。

(2) 血液培養検体の保存法
 ・常温で保存すべき
 ・常温でよいが2時間以内に検査室へもっていく
 ・直ちにフラン器へ入れるべき

 この3通りがありました。下の2つはほぼ同じ意図かもしれません。ちなみに当院では血液培養は外注で, フラン器で保存が必要なら, 検査室で37℃の恒温槽へ浸けることになります。宜しくお願いいたします。

【回答】
(1) カルチャー・ボトルのゴム栓を消毒するか否かという質問ですが, 基本原則は敢て危険 (細菌混入の可能性) を犯す必要はないということです。全米微生物学会 (American Society for Microbiology: ASM) のマニュアルには“採血に先立ち, 穿刺部位, カルチャー・ボトルのゴム栓, 採取チューブを消毒しなさい”と明記してあります。現在, この記載を敢て否定するだけの根拠はないと思います。

(2) 血液培養ボトルの保存ですが, はっきりしているのは“冷やしてはいけない”ということです。最新のCUMITECH 1C (Blood Cultures IV版) には“Blood for culture should NEVER be refrigerated or allowed to cool“と記載されています。しばらくの間でしたら常温で保存してもよいですが, 可能な範囲で, できるだけ早く35℃のフラン器 (あるいは検査室) に入れるのが望ましいでしょう。これは“培養陽性の結果がより早く得られる”からです。しかし水を入れた恒温 (水) 槽での加温は勧められません。恒温水槽の水には細菌がいっぱいだと想像されるからです (敢て危険を犯す必要はない)。

 血液培養を外注しているのでしたら, 外注先の検査センターと充分相談してください。正しい結果を得るのに必要な条件を提示, 保証するのも受注した検査センターの責任だと考えます (例えば, その検査センターがBACTECを使用している施設であれば, カルチャー・ボトルのゴム栓はヨード剤で消毒できない)。もし細菌の混入 (コンタミネーション) があった場合, 混入が起こったのは医療機関内でなのか, それとも検査センターで起こったのか, 責任の所在をはっきりさせる必要があるからです。

(琉球大学・山根 誠久)
 
【質問者からのお礼】
 お礼が遅くなり申し訳ございません。大変ご丁寧なご回答を有難うございました。現場に反映させて生かしたいと思います。今後も何かありました際は宜しくお願いいたします。本当に有難うございました。

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