05/10/31
■ 血液培養から検出されたPseudomonas vesicularis
【質問】
 初めてご質問させていただきます検査の△▽と申します。五島の小さい病院に勤務しています。

 血液培養にて, Pseudomonas vesicularisが同定されました。血液培養にて初めての同定菌なので自信ありません。P. vesicularis (Brevundimonas vescularis)とはどんな細菌なのでしょうか。また, その他のPseudomonas属との化学的性状の違いを教えてください。そしてまた, 血液培養にてP. vesicularisが出た症例があるのでしょうか???

 使った検査方法は: 血液培養 = ビオメリュ− (ディファジャック・アナエロビ−) ともに陽性。TSI −/−, オキシダ−ゼ(+), 同定キットはアピ20NEです。どうか宜しくお願い致します。

【回答】
 Brevundimonas属は植物, 果物, 野菜, 水, 土壌から検出される環境細菌で, 植物病原菌として最初に記載されています。臨床材料や環境から稀に検出されますが, 多くは汚染菌または非病原菌と判断されています。しかし水分環境で生息可能なため, 病院環境では問題となります。近似する菌種にBurkhoderia 属, Stentrophomonas属があります。Brevundimonas属にはB. vescularisB. diminutaがありますが, 発育にはビタミンやビオチンを必要とします。さらにB. diminutaはシステインを発育必須条件とします。両菌種の簡易な鑑別法としては, B. diminutaはすべてマッコンキー寒天培地に発育しますが, B. vescularisは約50%しか発育しません。また血液寒天培地やチョコレート寒天培地ではB. diminutaは黄褐色の集落形成, B. vescularisの多くは黄色_オレンジ色集落の形成が特徴です。生化学性状では, B. diminutaはglucoseを強く酸化しますが, それに比べB. vescularisは弱い酸化反応です。両菌種を区別する最も信頼性が高い試験はエスクリン加水解試験でB. vescularisは陽性, B. diminutaは陰性を示します。B. vescularisは敗血症の原因菌種として血液透析患者, 鎌状貧血患者や免疫の低下した患者から検出報告があります。血液からの分離報告はいずれも易感染患者からですので, 検出された患者の基礎疾患なども参考になると思います。その他の臨床材料からの検出では, 透析液, 口腔内膿瘍, 頭皮膿瘍, 子宮頸管から報告されています。

 またAPI 20NEは使用法を正しくおこなえばグラム陰性ブドウ糖非発酵菌種の同定法として信頼できる同定方法と思います。発育した菌集落の色調を参考に決定できると思います。

(琉球大学・仲宗根 勇)

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