05/06/02
■ 採血した血液培養を冷蔵保存
【質問】
 はじめまして。突然のメールで申し訳ありません。私は衛生検査所の微生物検査室に勤務しております。基本的なことで大変恐縮なのですが, 血液培養について:

(1) 採血済みの容器を冷蔵保存してはいけない理由
(2) ナイセリアなど, 低温に弱い菌が血液から分離される頻度

 以上, 2点についてご教唆ください。自分で参考書などを調べてもみました。(1) については「低温に弱い菌の検出率が下がるためではないか」と推測していますが, 明確な理由を述べたものがなく, 結局よくわかりませんでした。

 以上、用件のみにて失礼いたします。乱文ご容赦ください。

【回答】
(1) 質問の意味がよく理解できないのですが・・・“何故, 採血済みの容器, すなわち血液を注入した血液培養ボトルをわざわざ冷蔵するのでしょうか???” 血液を入れた培養ボトルは冷やさないで, むしろ直ちに培養フラン器に入れるべきです。培養フラン器がないのでしたら, 暖かい室温放置のほうがまだよいでしょう。何故なら, 血液培養の容器にはあらかじめ液体培地が容れてあるので, あとは細菌が増殖できるように暖めてやるだけでいいのです。早く暖め始める程, 早く細菌は増殖するので, 培養陽性の結果が早く得られます。血液以外の検体の場合には, 適切な培地に検体を接種するまでの期間に, 細菌が死滅したり, 細菌の濃度が変化しないように冷蔵保存するのです。

(2) ナイセリアなどの低温に弱い細菌の血液培養での分離頻度ですが, わが国では極めて低率, 極論すれば, 無視できる程とまで言ってよいでしょう。ナイセリアのひとつ, N. meningitidisの分離頻度は, 特に流行がない限り, 極めて低く, もうひとつの病原性ナイセリア, N. gonorrhoeaeの血液からの分離頻度はわが国でほとんどゼロだからです (欧米では淋疾が疑われる, 特に関節炎の症状のある時には血液培養が必須)。

(琉球大学・山根 誠久)
【質問者からのお礼】
 今晩は。昨日の「血液培養についての質問」に, とても丁寧な回答を頂き, ありがとうございました。お忙しい中, 稚拙な質問でお手を煩わせてしまったようで, 大変申し訳ありません。ご教唆いただいたことは, 今後の参考にさせていただきます。本当にありがとうございました。

[戻る]