■ 菌数調整について | |
【質問】
初めて質問させていただきます。現在, 工場で製造している無菌薬液中において, 接種した菌数が増減または変化がないか調べようとしています。新鮮培養したコロニーを釣菌し, 接種量を100 cfu/mlに調製したいのですが, 約2,600 cfu/ml (平板混釈法) となってしまいました。肉眼的な混濁で判断し, 調製したのですが, マックファーランドの標準液 (自家調製予定) をもとに懸濁したほうがいいのでしょうか??? 同じ菌数でも菌種によって (菌体の大きさなど) 濁度は変わりますか??? また, 変わらないとすれば, マックファーランドNo. 0.5というのは“xx cfu/ml”くらいなのでしょうか??? マックファーランドの濁度と菌数の見方がわからなく困っています。顕微鏡を使う細菌計算板もあると聞きましたが, どちらが正確な値が期待できますか??? また, 菌数を経時的に観察したいのですが, 48時間まで徐々に減少していた菌が, 72時間後に増加しました。このようなことが起きるのでしょうか??? 質問が多くなり申し訳ありません。わかりにくいい部分があるかもしれませんがよろしくお願いいたします。 【回答】
(1) McFarland濁度単位は, Escherichia coli ATCC 25922株で定義されたもので, 当然ながら, 同じMcFarland濁度でも, 菌種, 菌株によって生菌数濃度は異なると覚悟せざるをえません。McFarland #0.5濁度はEscherichia coli ATCC 25922株を1〜2×10^ colony forming units/mlを含む濁りの程度を示します。死菌も濁りの原因となりますから, colony forming units (生菌数) は菌浮遊液に含まれる細菌のviability (生存率) にも影響されます。またcolony forming unitsは単一の菌集落をつくる単位ですので, 菌体同士が凝集し易い菌種, 菌株 (例えば結核菌) では実際の菌濃度 (cells/ml) と生菌数濃度 (cfu/ml) には乖離があります。 菌数 (濃度) の定量方法には多種多様あります。いずれも一長一短で, 自分の必要とする方法を吟味して決定することになります。私の執筆した「戸田新細菌学改訂32版 菌数と菌発育の測定法 (p. 939〜941)」に簡単に紹介していますので, 参考にしてください。 (2) 観察を開始して48時間まで減少していた菌濃度が, 72時間後には増加していた・・・“こんなことがあり得るのか”という質問ですが・・・貴君自身がそれを観察した訳ですから, “事実, ある”のです。問題は, 何故そんなことが“起こったのか”を考えることです。どの程度減少, 増加したのか・・・その変化は有意なのか, 誤差範囲なのか・・・培養 (反応) 中になにか予期せぬことが起こっていなかったか否か・・・等々。何故, そのようなことが起こったのか考え, それを実証するのも科学の大変重要なことです。それを観察したヒトの能力が問われる場面です。 (琉球大学・山根 誠久)
【質問者からのお礼】
ご回答をいただきましてありがとうございました。McFarland #0.5濁度と生菌数の関係を具体的な説明で大変わかりやすく理解できました。菌数の経時的観察も計算通りにいかない分, 奥が深いと感じました。書物も是非参考にさせていただきます。 |