05/11/14
05/11/22
■ 発酵菌, 非発酵菌の鑑別方法
【質問】
 はじめまして。転勤により, 人から豚の病原菌同定が仕事になりました臨床検査技師です。見たこともない, 聞いたこともない菌が多くて戸惑っております。

 実は敗血症の検体より, TSI培地にもOF培地にも発育しないグラム陰性桿菌・球桿菌が検出されます。通常はTSI培地にて, ブドウ糖が発酵か非発酵かで使用する同定キットを決めておりますが, この場合, どうすればよいのか分からずに少々困惑しております。先日の菌では, コロニーの粘着性, 培地への固着性などからActinobacillusではないかと検討をつけ, HaemophilusPasteurellaとの鑑別など, 次に進めはしたものの, ブドウ糖の発酵性を確認できず, 同定出来たと言い切れずにおります。そこで, 「TSI, OF培地に代わる発酵・非発酵の鑑別方法」を教えていただけないかとメールしました。よろしくお願いします。

【回答】
 すべての菌種について, TSI培地 (厳密には酸化, 発酵試験培地ではありません) はブドウ糖 (0.1%), 乳糖 (1%), 白糖 (1%) を含む培地で, 斜面部に塗布すると同時に高層部にも穿刺して培養するため, ブドウ糖が発酵されて酸が生じれば, 高層部の黄変で発酵を知ることができます。しかし, 重要なのはブドウ糖の含有濃度が0.1%と少なく, 乳糖や白糖は1%含有されることです。通常の酸化, 発酵試験には1%濃度を用います。またOF培地などの簡単な培地ではすべての菌種の酸化, 発酵試験はできません。簡単な組成培地では増殖しない菌種の場合には, 栄養の豊富な糖培地を必要とします。栄養強化培地にはCTA培地 (cystine trypticase agar medium) があります。CTA培地では他の栄養を強化することなく, Neisseria, Streptococcus, Corynebacterium, Brucella, Pasteurellaなどの栄養要求性の高い菌種の糖分解が容易に試験できます。HaemophilusはX因子, またはV因子を含む糖培地が必要です。検出菌種の酸化, 発酵試験 (糖分解試験) で何れの培地を使用するかを簡単に選択する方法は, 試験菌株が普通寒天培地に発育する菌種であればOF培地を用いることができます (グラム陽性桿菌を除く)。発育しなければ他の試験培地を選択して実施します。質問はOF培地に代わる試験培地とありますので詳細には記載しませんが, 糖分解試験培地では培地中のペプトン, pH指示薬の種類が重要です。

(琉球大学・仲宗根 勇)


【質問者からのお礼】
 分かりやすい説明を有難うございました。どうしても使い慣れた物でやろうとしておりました。しかし, 今の職場では栄養要求の厳しい菌ばかりが対象になっているということを考え, CTA培地を常備し, 使用していこうと思います。


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