■ 口腔内偏性嫌気性菌, “P. g菌”について | |
【質問】
私は某大学歯学部に在学している学生です。口腔細菌学の授業で, 歯周病原性菌の中に“P. g菌”がいると習ったのですが, この菌は“偏性嫌気性菌”と習いました。が, この菌を採取して嫌気ジャーにて培養する際に, 30分から1時間は酸素に暴露されても生きているとも別の細菌学の先生に教わりました。偏性嫌気性菌である“P. g菌”は検査部位から採取する際に, 特別に注意しないと死んでしまい培養できないのではないのでしょうか??? 少し混乱していますので, できれば素人にもわかりやすく, 特に“P. g菌”について, 検査部位 (特に口腔内) からの採取時の方法, 時間など, お教え願えないでしょうか??? よろしくお願いいたします。 【回答】
はい, “P. g菌”は酸素の存在下では増殖できない, また酸素の暴露により死滅していく細菌です。偏性嫌気性菌の仲間に入ります。“P. g菌”は嫌気性ジャーで培養しないと発育しない菌です。 さてP. g菌の培養には, 使用する培地についても考える必要があります。歯科関係の人は, 培養にTSAを基礎にした血液寒天培地を使う人が多いようです。酵母エキス, ヘミン, メナディオンを添加して使うと発育が良くなります。通常の方法で作製した寒天培地には, 時間ととともに酸素が溶け込んでいきます。この酸素がP. g菌の発育を妨害しますので, シャーレで固めた後1時間以内の作り立ての培地 (freshly prepared mediaという), または固まった寒天培地を嫌気ジャーの中のような嫌気的な環境で1日寝かせておいたもの (Prereduced mediaという)を使います。ジヤーから出してすぐ使うのがポイントです。通性菌の培養に使う培地のように, 酸素に触れたまま冷蔵庫の中に保存しておいた培地の使用はもってのほかです。 次に検体の採取です。P. g菌は歯周病のポケットに増殖しています。歯肉縁下の歯垢を“つまようじ”, ペーパーポイントなどでとり, そのまま平板培地の上に塗り, 白金耳で塗り広げて嫌気ジャーに入れることができれば, 確実に発育してきます。酸素の影響を最小限にすることが重要です。通常の大気に曝す時間が短ければ短い程よいのです。3日以上の嫌気培養で1 mmあるいはそれ以上の濃い紫から黒色の集落を作ります。ペーパーポイントをポケットに挿入し, 検体を吸い取った場合を考えましょう。検体量は極めて少ない量です。P. g菌の酸素に対する感受性の程度から判断すると, 普通の滅菌試験管の中に入れて保管した場合には20分以内, 嫌気的な容器 (嫌気ポーター) に入れた場合でも1時間以内の処理が安全でしょう。 (岐阜大学・渡邉 邦友) |