05/06/28
05/06/29
■ 口腔内細菌の培養
【質問】
 こんにちは。私は現在, 口腔細菌に対する様々な化合物の抗菌活性を測定したいと思っております。しかし口腔細菌の種類が多くて (S. mutans, S. sobrinus, S. sanguis, S. salivarius, P. gingivalisなど), 果たして同じ培地で培養してもよろしいでしょうか??? 文献をみてもBHI培地, MS培地, TTY培地など, いろいろな培地が使用されています。どの培地が最もよいでしょうか??? 市販品はありますでしょうか??? ぜひ, 教えて頂きたいとお願い申し上げます。

【回答】
 口腔内細菌に対する抗菌活性を調べたいとのことですが,口腔内から特定の細菌を分離するのが目的でなく,抗菌活性を調べるために必要な量の細菌を得る目的で培養するのであれば,選択分離培地を使用する必要はないと思います。Streptococcus mutans , S. sobrinus , S. sanguis , S. salivarius などの連鎖球菌属であれば血液寒天培地でよいと思います。一方,Porphylomonas gingivalis などのPorphylomonas 属または Prevotella 属は栄養要求性の厳しい偏性嫌気性グラム陰性桿菌ですから,ウサギ溶血液加ブルセラHK寒天培地などを用いた嫌気培養が勧められます。いずれも市販品として粉末の基礎培地や調製済みの生培地などがあります。

 次に化合物の抗菌活性を調べるための培地についてですが,化合物の種類にもよると思いますが,抗菌薬 (抗生物質) の薬剤感受性試験に使用する培地が応用できると思います。薬剤の抗菌活性 (最小発育阻止濃度: MIC) を検査する方法として寒天希釈法と液体希釈法がありますが,前者は培地調製時に抗菌薬を添加して抗菌薬含有の寒天培地を作るものです。培地は前述の培地が使用できると思いますが,基礎培地を滅菌して, 約50℃に冷却後に血液と抗菌薬 (化合物) を加えてシャーレに流して固めるという操作が必要になります。後者は液体培地 (ミュラーヒントンブイヨン) に一定量の抗菌薬 (化合物) を加えて濃度希釈系列を作り,被検菌の発育を観察するものです。ミュラーヒントンブイヨンにサプリメント (馬溶血球液, β-NAD,酵母エキスなど) を添加することにより連鎖球菌の発育も可能になります。液体培地もサプリメントも, 市販品があります。Porphylomonas 属やPrevotella 属については馬溶血球液やビタミンKなどを添加した感受性用ブルセラブロスというものがあります (調製済みの市販品あり)。これらはあくまで“発育支持力”という面から見て, 貴君の実験に使えるのではないかという培地の1例です。使用する化合物との“相性”というものもあると思いますので検討してみてください。

(公立玉名中央病院・永田邦昭)

【質問者からのお礼】
 お忙しい中, 丁寧な回答を頂き, 本当にありがとうございました。今後教えていただいた方法で実験して見ます。また実験経過で疑問点がある時に質問をさせていただきます。よろしくお願い致しま す。


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