06/10/10
06/10/11
■ 抗酸菌塗沫に対する設備
【質問】
 小規模病院の細菌室に勤務しています。当院では一般培養検査は院内で, 結核菌検査は外注していますが, 緊急の抗酸菌塗抹だけは院内で行っています。マスクと手袋着用, 部屋の戸を開放にしなければ, “保健所の監査や病院機能評価, ISO9001審査を通過できる”ものと思っていますが, どうでしょうか??? やはり安全キャビネットやクリーンベンチは, 細菌室を続ける上で最低限必要なものでしょうか??? 教えてください。

【回答】
 ある時, ある場面での会話です。

Q1: 微生物検査を実施するに当たり, マスクや手袋は必要でしょうか
(A: なくてもできますが, 着用するほうがベストです)

Q2: 培地作成などの無菌操作にクリーンベンチを, また検体処理や生菌操作時には安全キャビネットが必要でしょうか
(A: なくても作業はできますが, 培地は生培地を購入し, 検体処理や生菌取り扱いは安全キャビネットまたは生物学的安全基準レベル3の設置がベストです)

Q3: 保健所の監査, ISO審査, 機能評価で合格するにはどうしたらよいでしょうか
(A: 審査員によって見方が異なりますので, 来訪者によって対応を考えてください。あるいは法的基準, 審査基準を読み, 不明な点については自己判断しないで, それぞれの審査機構に訊ね, それを守らない場合はどのような罰則規定があるかを確認してください)

 どう判断しますか。臨床診断や推定により感染症の種類を絞り込むことができますし, そのような患者検体であれば取り扱いも注意することでしょう。しかし, どの検体にどんな微生物が潜んでいるかわからないので,「標準予防策: 患者の含水性体液由来物質はすべて感染性として取り扱う」を厳守するように啓蒙活動が行われています。その対策として, 患者に接する場合は手洗い, 手袋, マスク, エプロン, キャップ, ゴーグルを適宜使用しています。故に, 微生物検査室においても同様の基本的対応を講じ, 目的検査項目と範囲に沿った操作を行えばよいものと考えます。必要に応じ関係者会議 (例えば院内感染対策委員会や臨床検査適正化委員会) で決定してもよいでしょう。緊急抗酸菌塗抹検査のみの対応であれば, マスク, 手袋, ガウンを着用し, 周囲に飛散させないようにディスポの白金耳を利用し, 検査終了後の消毒をしっかりすることで, 注意深く行えば, 一般の実験台上でも十分作業が行えると私は考えます。

 臨床からの依頼にはなるべく答えてあげて, まずは目の前の患者を救ってください。そして時機を見て設備の必要性を唱え, 安全性の充実を図ってください。既に同様の質問に対する回答のいくつかが, この「質問箱」にありますので参考にしてはいかがでしょうか。

(大手前病院・山中 喜代治) 


【質問者からのお礼】
 細菌検査室は何かと赤字傾向なので, 今以上にお金がかかってくるようであれば, 閉鎖され, 外注になってしまいそうで危機感を感じていました。臨床側では緊急塗抹は重宝され, 感謝されることが多く, 薬剤感受性結果に関しても医師との会話も多く, 仕事の満足感が多い部署だと思っています。できるだけ臨床側からの要望に答えつつ存続できるようにがんばっていきたいと思います。有難うございました。


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