06/07/04
■ 酵素基質培地での大腸菌の判定
【質問】
 はじめまして。私は食品検査会社で検査をしております。

早速質問なのですが, 弊社では大腸菌群および大腸菌の検査に“クロモカルトコリフォーム培地”を使用しています。判定の際に, 大腸菌群については薄いピンク色の集落までカウントしているのですが, 大腸菌については薄い集落を数えていいものか分かりません。青から青紫の集落を大腸菌としていても, 水色に近い集落は数えなくてもよいのでしょうか??? EMB培地に接種したところ, 金属光沢様の集落は見受けられませんでした。もし, “クロトコリフォーム培地”で大腸菌でなく, しかも薄く水色に色づく菌がありましたら教えて頂けないでしょうか。

【回答】
 ご質問の件ですが, “クロモカルトコリフォーム”は弊社の製品ではありませんので, 一般的な大腸菌・大腸菌群に関しての問題として答えます。

 弊社で扱っていますクロモアガーECCを含め, 大腸菌 (群) の検査培地は, 大腸菌群に共通なβ-ガラクトシダーゼと大腸菌に特異的なβ-グルクロニダーゼに対する発色基質を含んでおり, これらの細菌がこの発色基質を分解することで, それぞれの細菌を菌体内部から染めていくといった方法がとられています (クロモカルトコリフォームでは, 大腸菌以外の大腸菌群はβ-ガラクトシダーゼが6-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド〔サーモンGAL〕で赤くなり, 大腸菌ではさらにβ-グルクロニダーゼが5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニドを分解して青く発色するので紫になります)。この酵素基質の分解・発色は24時間程度で見ることになっていますが, この発色は15時間以後の培養後の比較的遅い時期に見られるものが多いようです。質問にあります発色の弱い現象は, 菌が損傷を受けるなどして遅滞期が長いと起こることも考えられますので, こうしたコロニーが見られる場合には培養時間を延長して観察してみるのが1つの手です。それでも発色が強くならなければ, 違う種類の細菌と考えられます。また, 迅速に大腸菌の確認を行うにはコロニーに1滴のコバック試薬を滴下して1分間以内に赤くなってくれば大腸菌と考えることができます。製造元のメルク社のコメントによると, 稀にβ-グルクロニダーゼだけを持つ細菌が淡青色のコロニーを作るようです。また, 生の魚介類のサンプルの場合には, これらの試料がβ-グルクロニダーゼを含んでいるので注意が必要です。

(関東化学・久保 亮一)


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