■ 胸水や腹水を血液培養ボトルに | |
【質問】
お忙しいところ, 大変申し訳ありません。いつも参考にさせていただいています。下記の質問をよろしくお願い致します。 “血液培養のボトルに血液以外の検体を入れた場合に検出率がどう変わるのか???” 当院では細菌検査の検体は増菌培養をしております。最近, 血液培養のボトルに胸水や腹水を入れて検査に出されることが続いているので質問をさせていただきたいと思います。 血液培養ボトルで提出した場合と, (通常の増菌培養で) 一般の培養を行った場合とに, 細菌の検出率が変わるのでしょうか??? 一般的な培養も提出され, 血液培養ボトルでも併せて提出されていますので, より検出率を上げたいという意図ではないかと考えられるのですが, その根拠はあるのでしょうか??? (私の個人的な印象としては, 当院の培養検査で胸水に関してですが, 胸水の検査結果は滲出性で, 好中球も検出されているのに, 当然培養で出るだろうと考えたのに, “培養結果が陰性”であることがあり, 通常の滅菌スピッツで提出する培養検査では検出ができていないのではないかと考えたことがありました。そのため, 現在は病棟を担当していないので, そのような検体を提出することがなくなったのですが, かつては私も胸水は血液培養のボトルと通常の滅菌スピッツでの提出方法で, 両方同時に検査を依頼したことがあります)。今回当院の検査技師より改めて疑問として“エビデンスがあるのか???” と質問され, 根拠をもって回答することができませんでした。もし検出率が上がるという根拠がないのであれば, 敢えて両方を提出していただくことは止めていただくように院内に通知したいと考えています。ご回答をお願い致します。 【回答】
(愛媛大学・宮本 仁志) 【質問者からのお礼】この度はお忙しい中, 質問に回答して頂きありがとうございました。早速, 院内に情報発信をしていきたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。 【読者からのコメント】
さて, 8月28日付けの「胸水や腹水を血液培養ボトルに」ですが, 弊社でも血液培養ボトルを取り扱っており, よくこのご質問を受けます。これについて, 追加をさせていただければ幸いです。 血液培養ボトルについて多くの方々で, 一部の誤解があります。それは血液培養ボトルは発育支持力が高いため,
どんな材料からでも菌を増菌可能と思われていることです。血液培養ボトルの設計ポリシーは,「血液材料からほとんどすべての分離される細菌を発育させることが出来る」です。つまり臨床材料から分離される細菌と同じです。しかし,
ここで大きな誤解があるのです。血液培養ボトルの培地成分だけでは, すべての細菌を発育させることは出来ません。回答者の宮本先生も書かれている通り,
血液材料以外からのHaemophilusは発育させるのにサプリメントが必要です。血液培養ボトルを製造する際,
オートクレーブで滅菌されますが, この際易熱性成分 (ヘミン, NADやビタミンB6など)
は破壊され, かなり低濃度になっているからです。通常, 血液培養は十分量の血液がボトルに接種されることが前提になっています。そのため,
栄養成分が血液から補完され, 完全に近い培養液になるという考えで作られています。しかし,
血液以外の材料や, 非常に少量の血液の接種の場合, 栄養素が十分でない場合があります。特に,
髄液を材料にされる場合は, 接種量が少ない上に栄養成分も血液に比して少ないため,
栄養補完が完全ではありません。このような場合は, 市販のサプリメントを添加いただくか,
馬溶血血液を添加いただくかをお願いしています。何も添加しない場合であっても,
検出するのに十分な菌量が接種された場合, ほとんどの菌は問題なく発育いたします。しかし,
このような場合, 一部の菌を落とす可能性があることをご理解いただき, 使用いただけるようにお願いしたいと思います。Haemophilus
sp. Neisseria meningitidis は落とす可能性があります。
|