06/07/21
06/08/08
■ 救急車内の救急資器材の消毒方法
【質問】
 はじめまして。■■と申します。よろしくお願いいたします。

 私の職業は“救急隊員”なのですが, 救急車内, 救急資器材の消毒方法について, 私の所属で行っているやり方が十分なのか, また不十分であれば, どういった方法が必要なのかをご教授願います。

 まず最初に, 救急車内についてですが, 私の所属する消防本部では, 救急車内 (患者室の床や壁) が血液や吐物などで汚染された場合の清掃・消毒方法として, ティッシュやアルコールティッシュで清掃・消毒をしています。また, 定期的に行う消毒として月1回, ホルマリンガス消毒器を用いた消毒を行っています。説明書通り, 100%エタノール 約250 ccを消毒器に入れ, 約5分間加熱し, ガスを発生させ, 車内に入れて約1時間かけて消毒しています。また, 感染症の疑いがある傷病者を搬送した場合もこのような方法で臨時消毒をしています。

 次に救急資器材については, 主にアルコールティッシュで清拭して消毒しています。また, 滅菌しなければいけないような資器材 (喉頭鏡ブレード, マギール鉗子など, 口腔内や気道内に入れるもの) については, 民間の業者に委託しています。以上のような方法で, 救急車内や資器材を消毒していますが, いくつか疑問があり, ご質問させていただきました。

(1) 例えば, ホルマリン (ホルムアルデヒド) は, ほとんどすべての微生物に有効ですが, 人体にも有害とされています。しかし, 私たち救急隊員は月1回, 消毒時にどうしてもホルマリンを吸入してしまうことがあり, 身体への影響があるのではと心配です

(2) また資器材のうち, 例えば酸素マスクは, 病院などでは患者毎に使い捨てと聞いていいますが, 当本部では, 近年の緊縮財政から毎年予算が減らされ, 資器材が十分に購入できず, 患者毎に使い捨てなど到底できず, アルコールティッシュで消毒して (大袈裟かもしれませんが) ボロボロになるまで使っています。このような消毒方法で充分なのでしょうか・・・

長文で申し訳なく思いますが, 何卒ご教授よろしくお願い致します。

【回答】

(1) ホルマリンの身体への影響について
 救急車内を月1回, ホルマリン・アルコールによるガス消毒をしているとのことですが, 本法は高度に分類される消毒剤を使用しており, 殺菌力も強く効果が期待できます。月1回程度のホルマリンの吸入は, 曝露時間にもよりますが, 通常ではそれほど健康には問題はないと考えます。しかし, ホルマリンは発癌性物質として知られており, 大量曝露は危険ですので注意して下さい。

 車内環境の清潔に保つには, 消毒剤の使用も必要ですが, 最も基本的なことは車内清掃で, 車内清掃を徹底し, 病原微生物の温床にもなるごみやほこりを取り払うことです。

 救急資器材の消毒は, アルコールでの清拭や噴霧を, 使用後こまめに行って下さい。また, 床に落ちた血液はウイルスの存在も考慮し, 1%のミルトン (次亜塩素酸ナトリウム) などで消毒をするのがよいでしょう。

(2) 酸素マスクの消毒法について
 マスクも使用すれば汚染されます。使用後はマスクをよく乾かして, 乾燥状態にしておくことが必要です。それは, 細菌が乾燥に弱いためです。また, マスクは一個のみを使用するのではなく, 複数個のものをそろえ, 取り代えて使用するのがよいでしょう。

 使用に際しては, アルコール消毒して下さい。マスクの洗浄が可能であれば定期的な洗浄を行い, 清潔な状態で管理, 保管をして下さい。天日干しもコストがかからないので推奨します。

(近畿大学・古田 格)

【回答】
 こんにちわ。■■と申します。昨年の秋頃に質問させいただき, ご回答をいただくまでに半年以上の月日が流れ, 先生方におかれましては大変ご多忙のなかでご回答いただき厚く御礼申し上げます。救急現場での感染防御対策は, この数年間で飛躍的に向上しました。つい数年前まではディスポグローブやマスクなどの感染防御対策はほとんどなされず, 素手で血液や嘔吐物を触るなどは当たり前でした (当局だけではないと思いますが・・・)。近年はJPTEC, ICLSなどの救急技術の標準化が進み, それらの実技の中で最初に行うのが「感染防御・スタンダードプレコーション」であり, こういった講習を受講する救急隊員が増え, 現在の救急現場ではまず, そういったお粗末なことはないと思います。感染防御は様々な処置をする前にまずしなくてはならない第一歩で, 感染防御は, 我々救急隊員に必要である最も重要なカテゴリーのひとつと考えます。ですから, 貴会ホームページの「質問箱」は我々救急隊員には大変参考になります。他の方々の質問を拝見し, 参考になることもよくあり, 今後も活発な質疑応答が行われることを期待しています。ご回答を待っている間に, 新たに質問させていただきたいことができましたので, また「質問箱」を活用させていただきたいと思います。ご多忙とは存じますが, ご回答いただけることを楽しみにしています。今後も貴会のホームページのますますのご発展をお祈りいたします。それでは失礼致します。


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