06/02/16
06/02/17
■ LB培地でのガス・酸の産生
【質問】

 はじめまして。●●と申します。惣菜メーカーで品質管理をしています。

 大腸菌群の検査についてお聞きしたいのですが・・・うちの検査室では大腸菌群の検査で, BGLB培地とデソキシコレート培地を使用しています。検体は主にサラダや惣菜なのですが, 生野菜などでデソキシコレート培地に非常に細かくて判定の難しいコロニーなどが出現することが多々あります。そこで, 「食品衛生検査指針」に基づき, 確定試験・完全試験を実施したところ, EMB培地で金属光沢のコロニーが出現したにも拘わらず, LB培地で反応なし (ガス・黄変がない) ということが何度もありました。また, 明らかにデソキシコレート培地の典型的なコロニーを釣菌して, 同じように検査を実施したところLB培地でガスの産生がない (黄変だけ起こった) ということもありました。これは一体何が原因だと考えられますか???

 また, EMB培地から釣菌するときは, 一旦“非選択性培地”で純培養してからLB培地に接種したほうがいいのでしょうか???

お忙しいとことろ恐れ入りますが, ご返答のほど, 宜しくお願い致します。

【回答】
 デソキシコレート培地に非常に細かくて判定の難しいコロニーが形成されることについてですが, この現象として“菌数が非常に多い”場合が考えられます。サンプルは1枚の平板中の菌数が30_300個になるように希釈してください。デソキシコレート培地では, 大腸菌群は比較的良好な発育をするため大きなコロニーを形成します。EMB培地で金属光沢のコロニーが出現したにも拘わらず, LB培地で反応なし(ガス・黄変がない)については, 金属光沢コロニーの形状などの情報が記載されていませんが, 大腸菌群以外のグラム陰性菌かグラム陽性菌が考えられます。「食品微生物検査培地マニュアル新版 (日水製薬)」では, EMB培地には雑菌の発育抑制成分が添加されていないと記載されていますので, グラム陽性菌も発育できる可能性があります。グラム陰性無芽胞桿菌であることを前提にすると, 回答者は野菜などから分離され, LB培地でガスの産生がなく, 黄変だけの見られる菌種としては, Enterobacter, Klebsiella, Aeromonasなどを経験しています。EMB培地から釣菌するときは, 一旦“非選択性培地” (標準寒天培地など) で純培養することが重要です。その後でグラム染色, LB培地接種, IMVIC試験などを実施してください。

(日水製薬・小高 秀正)

【追加質問】
 ご回答ありがとうございます。追加で質問なのですが,「食品衛生検査指針」によると, 完全試験でLB培地でガス・酸の産生を認め, グラム陰性, 無芽胞桿菌であれば完全試験「陽性」で, いずれかの性状でも確認できない場合は「大腸菌群「陰性」と書かれています。つまり, “ガスの産生のない例として回答に挙げられた菌種 (Enterobacter, Klebsiella, Aeromonasなど) は「大腸菌群ではない」”と言えるのでしょうか???

【追加回答】
 文章から誤解を招いたことに深謝致します。質問者が大腸菌群の定義を記載しているように, この定義に当てはまる菌が大腸菌群と考えてください。質問者は,「どの様なことが考えられるか」という質問でしたので, 大腸菌群とされる菌のなかには, その反応を示さない菌も存在するということを書きたかったためです。一例を挙げますと, Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology Vol. 1 (1984年版) では, Citobacterer amalonaticus, C. diversus, C. freundii, Enterobacter agglomerans, E. gergoviae, Klebsiella pneumoniae subsp.ozaenaeなどの乳糖分解陽性率は26〜75%です。100%ではないということです。ちなみに, 食品衛生上, Aeromonasは大腸菌群には属しません。

(日水製薬・小高 秀正)


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