04/12/20
04/12/24
■ レジオネラ抗原は何故, 尿で陽性になる???
【質問】
 初めてメールします。初歩的な質問で申し訳ありません。

(1) レジオネラ抗原の検査はなぜ尿で検査できるのでしょうか
(2) 感染後どのくらいの期間で陽性になるのですか
(3) 血清中の抗体検査に比べて感度, 特異度はどの程度異なるのでしょうか

 以上よろしくお願いいたします。

【回答】
(1) レジオネラ抗原の検査はなぜ尿で検査できるのでしょうか
 レジオネラ感染初期においては感染した菌が血液中に多量に破壊され流出します。そのため感染初期に検出感度が高くなることになります。その後は肺内で感染が成立し, 食細胞で増殖し, 同時に破壊された菌体, すなわちレジオネラ抗原の一部が尿中に排出され, 尿中で“濃縮される”ために尿を検査材料として用いることができます。血液中の抗原量は微量であるため, 現在の測定キットでは測定できません。レジオネラ尿中抗原の性状としては, 分子量が約8,000〜10,000のリポ多糖体で, 100℃, 30分間の熱処理にも安定であり, 蛋白分解酵素のトリプシンやペプシン, proteinase K処理にも影響を受けないとされています。尿中抗原検出キットによって検出感度の差がありますが, 尿を濃縮することで感度が上昇する報告もあります。

(2) 感染後どのくらいでの期間で陽性になるのですか
 尿中抗原の検出感度では, 発症後1〜7日目の感度が最も高く, その後は経時的に低下し, 28日目以降は陽性率が32%になった報告や, 発症早期の感度は82〜100%と高いが, その後4日目〜7日目には感度が一時低下し, 8日目から21日目までは86〜100%の測定感度を示す報告もあります。in vivoの感染実験では, 感染後24時間で最高値に達し, 一時低下した後, 6〜8病日に再び上昇する傾向を示した報告もあります。

(3) 血清中の抗体検査に比べ感度, 特異度はどの程度異なるでしょうか
各測定法の検出感度と特異度は, 報告されている成績では以下の通りです:

・血清抗体価測定 (IFA, 凝集法): 感度75%, 特異度95〜99%, 
・抗原検出蛍光染色 (DFA): 喀痰, BALF での感度25〜75%, 特異度 95〜99%, 生検肺での感度 80〜90%, 特異度99%,
・培養法 (喀痰, BALF): 感度80〜90%, 特異度100%, 肺生検では感度90〜99%, 特異度100%
・尿中抗原: 感度80〜99%, 特異度99%

 質問の詳細は下記の文献を参照して下さい。

[参考文献]

Dominguez J.A et al: Comparison of the Binax Legionella urinary antigen enzyme immunoassay (EIA) with the Biotest Legionella Urin antigen EIA for detection of Legionella antigen in both concentrated and nonconcentrated urine samples. J. Clin. Microbiol., 36: 2718〜2722. 1998

斉藤 厚 他: レジオネラ肺炎に対する早期診断法としての尿中抗原検出法の検討. 厚生科学研究費補助金新興・再興感染症事業 平成10年度 研究報告書

小出 道夫, 斉藤 厚: レジオネラ症. 臨床検査 42: 523〜528. 1998.

(琉球大学・仲宗根 勇)
【質問者からのお礼】
 先日は尿中レジオネラ抗原に関して丁寧な回答ありがとうございました。大変参考になりました。今後ともよろしくお願いいたします。

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