■ レジオネラの液体培養 | |
【質問】
はじめてメールさせていただきます。私は抗菌作用のある物質の研究を行なっていますが, 今回レジオネラ菌に対しての抗菌活性を調べることになりました。これはフィルターに抗菌物質を担持させ, そこに菌液を流してどれだけ菌が死ぬかというものです。調べてみると, レジオネラの培養はBCYE寒天培地などの特殊な培地で行なうことがわかりましたが, “液体培養”についての情報がまったく得られませんでした。私の所属する研究室では, このような研究を行なっているのは私だけで, 他に知識のある人間がいませんので, 恥ずかしながらも今回質問のメールを送らせていただきました。 さっそくその質問なのですが, 液体培養の情報がないということは“レジオネラの液体培養は難しいのでしょうか???”それとも寒天培地から寒天を除いた組成の培養液で培養すればいいだけのことなのでしょうか??? お忙しいとは思いますが, よろしくお願いいたします。 【回答】
質問の第一, 「液体培養の情報がないということは“レジオネラの液体培養は難しいのでしょうか???”それとも寒天培地から寒天を除いた組成の培養液で培養すればいいだけのことなのでしょうか???」ですが, レジオネラを液体培地で増殖させることは何もそんなに困難なものではありません。質問者が記されているように“寒天培地から寒天を除いた組成の培養液”を用いればよいのです。 ただ貴君の研究されている内容ですが・・・「フィルターに抗菌物質を担持させ, そこに菌液を流してどれだけ菌が死ぬか」と記されておりますが, 瞬時に菌液が通過してしまうようなものなのでしょうか??? または, 菌液の通過にかなりの時間 (どのくらいでしょうか???) を要するものなのでしょうか??? この研究が, 例えば24時間風呂で話題となっているレジオネラを殺菌する目的で, その抗菌効果を確認してみようというのか, とにかく, これ以上の情報がまったくありませんので, 正直なところコメントしようがありません。 ある物質に抗菌活性が認められる場合, 瞬間的な接触のみで殺菌的に作用するものはほとんど皆無かと思います。ある一定時間の持続的接触が必要です。その場合, その抗菌効果が時間依存的に, つまり接触時間を長くすれば長くなるほどに抗菌効果が顕著になるのかということが重要だと考えます。ある「物質」の抗菌活性の有無 (程度) を評価するのは, 一定菌液濃度の一定量の菌液を, 抗菌活性を調べる「物質」と一定時間接触させたときの「生菌数」の減少を定量的に計測することが不可欠です。つまりは, 液体培養では評価は困難ということになります。液体培地で培養した場合は, 被験菌液が完全に殺菌されているのか否かについての定性的な情報は判りますが, それでは定量的な評価にはならないでしょう。一定濃度に調整したレジオネラ菌液を, 被験「物質」と接触させて, 計時的に一定量の菌液を採取し, 希釈系列を作成して固形培地 (BCYEα寒天培地など) へ一定量を接種して生菌数を計測し, X軸に時間を, Y軸に10を底とする常用対数目盛りで生菌数をプロットしてグラフ化する。いわゆる「殺菌曲線: Time-Kill Curve」を描かせて評価する手法が一般的かと思います。 (信州大学・川上 由行) 【質問者からのお礼】
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