【質問】
私は○×大学の学生です。今回, Klebsiella pneumoniaeをLIM培地に接種した時に“不鮮明な陽性”と判定されることがありますが,
この現象について教えていただきたくてメールしました。よろしくお願いします。
【回答】
まず質問の内容からだけでは,“不鮮明な陽性”が何の陽性なのかがよくわかりません。LIM
培地はリジンデカルボキシラーゼ (リジン脱炭酸酵素) 産生性とインドール産生性および運動性を同時に検査できる培地ですが,この中のどの項目がどのように“不鮮明”なのかを詳しく記載する必要があります。実験によって生じた反応をわかりやすく説明することは,発表やレポート作成において大切なことです。ただ,Klebsiella
pneumoniaeは本来インドール産生性および運動性は「陰性」の菌種であり,おそらく“不鮮明な陽性”はリジン脱炭酸試験のことだと考えられますので,リジン脱炭酸試験について回答します。“不鮮明”な状態として2つのことが考えられます。
・全体的に陽性色 (紫色) が弱い場合
K. pneumoniaeは本来リジン脱炭酸酵素を産生しますが,酵素活性は菌株によって強弱があり,使用した菌株が活性の弱い菌であった可能性がひとつ考えられます。また気をつけなければならないのは,試験に使用する菌株の前培養の時間です。培養時間が長くなると,見かけ上の菌集落には変化がなくても集落中の生菌数は確実に減少しています。そのような菌株を使用すると反応が弱くなる可能性はあります。試験には前培養の時間の短い,
“新鮮な菌株”を用いることが基本です。
・部分的に陽性色 (紫色) が弱い部分を認める場合
LIM 培地と同じく, 運動性を確認できる培地としてSIM培地がありますが,この培地では運動性を確認しやすくするために半穿刺をすることがあります。つまり培地の高層部の管底まで白金線を穿刺せずに途中で止める方法です。LIM
培地でこれを行なうと,白金線が届いていない (菌が接種されていない) 部分の発色が弱いか,まったく認められないことがあります。
多くの性状確認試験用培地がありますが,一言で“陽性”・“陰性”といっても菌種あるいは菌株によって反応は異なります。またそれが逆に“菌種推定の手がかり”となることもありますので,色々な菌株の反応を注意深く観察していくことが大切だと思います。
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