06/07/26
■ リステリア菌の同定
【質問】
 リステリア菌について質問させて頂きます。

メルク社のUVMリステリア選択増菌ブイヨンで一次増菌し, 次にフレーザー・リステリア増菌ブイヨンで二次増菌後, パルカム・リステリア選択寒基礎培地に塗沫して培養したところ, 直径 1 mmで周囲が灰色, 中心部が黒〜茶のコロニーが出現しました。培地の色は赤から黒に変わっていました。これはリステリア・モノサイトゲネスでしょうか??? 生化学試験, 血清型試験は行うことができません。この培地だけで判定することは難しいのでしょうか??? また, 簡易同定キットのようなものは市販されているのでしょうか??? 以上, よろしくお願いします。

【回答】
 培地については, 弊社のものをお使いでない様ですが, 内容はISOで推奨されている一般的なものなのでお答えを試みてみます。

 まず, 質問の内容はISOが食肉検査に推奨している方法と拝察します。この結果を見る限り, “リステリアと疑ってよい”と思いますが, 法的に問題になる“リステリア・モノシトゲネス”かどうかを確認するには, これだけでは不十分です。これらを確認するには, 糖の分解試験としてラムノース (+), キシロース (−), マンニット (−) であることと, 黄色ブドウ球菌とのCAMPテスト (+) を確認しなくてはなりません。しかし, 質問者はこれらの試験が出来ない様ですので, いくつかの簡易法をお示ししましょう。

 まず鑑別を簡単にやるには, D-アラニルアミノペプチダーゼの産生を見るのがよいでしょう。この酵素はリステリア属菌が一般的に産生するのですが, リステリア・モノシトゲネスだけが産生しないことを利用したものです。この酵素は, 基質のアラニルアミドメチルクマリンを分解して赤く発色しますので, 発色すれば“モノシトゲネス以外のリステリア”と考えます。カードテストとして, 弊社も含めて市販品があり, コロニーを塗りつけて試薬を付けるだけですので便利です。もう一つは, 酵素基質培地をパルカムの代わりに用いる方法で, これだと青いコロニーの周りにハローの出たものは, ほぼリステリア・モノシトゲネスと考えてかまわないくらい精度が高いとされています (防菌防黴学会講演 〔平成17年1月19日〕などで評価が発表されています)。酵素基質 (クロモアガー) による方法は, 最近, ISO (NFEN11290-1) でも認められているので,公的にも利用しやすい物になってきています。いずれにしても, 比較的新しい方法なので, 現状の検査コストやルチーンの流れに組み込めるかどうかを検討して試されたらよいでしょう。

(関東化学・久保 亮一)

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