04/11/19
■「メタロβラクタマーゼ産生緑膿菌」と「多剤耐性緑膿菌」
【質問】
 はじめまして。わたしは病院 (199床) で働く臨床検査技師です。細菌検査は検査センタ−に外注しています。センタ−より, “メタロβラクタマーゼ産生が疑われる緑膿菌”が検出されたという伝票が返ってきました。感受性のパターンは, イミパネム・アミカシン・シプロフロキサシンともに耐性 (R) です。「多剤耐性緑膿菌」と「メタロβラクタマーゼ産生緑膿菌」の関連についてお教えください。よろしくおねがいいたします。

【回答】
 「多剤耐性緑膿菌」は, カルバペネム, ニューキノロン, アミノ配糖体の3系統の抗菌薬に耐性を獲得した緑膿菌です。「メタロβラクタマーゼ産生緑膿菌」は, ペニシリン, セフェム, カルバペネムやクラブラン酸, スルバクタムなどのβラクタマーゼ阻害剤など, βラクタム環を持つほとんどすべての抗菌薬を加水分解するβラクタマーゼ酵素 (クラスBに分類) を持った緑膿菌です。したがって緑膿菌以外にも, Bacillus cereusStenotrophomonas maltophilia, Serratia marcescens をはじめとする腸内細菌にもメタロβラクタマーゼを産生する菌種があります。「多剤耐性緑膿菌」の中にも, メタロβラクタマーゼ産生菌があると理解してください。

 質問にありました薬剤感受性パターンでは, 3薬剤すべて耐性なので「多剤耐性緑膿菌」といえますし, カルバペネム系であるイミペネムに耐性であるということで, “メタロβラクタマーゼ産生が疑われる”と報告が返ってきたのではないでしょうか。しかし, メタロβラクタマーゼ産生の有無はやはり大変重要ですから, 疑われる場合にはしっかりと調べてもらうように検査センターに依頼されることを強くお勧めします。

(愛媛大学・辻原 まゆ)

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