05/01/28
■ メタロ-β-ラクタマーゼとジピコリン酸
【質問】
 いつも適確なご返答をいただきありがとうございます。今回はメタロ-β-ラクタマーゼ産生菌の検出で, “ジピコリン酸”を使用しての検出法について原理と方法について教えてください。宜しくお願いします。

【回答】
[原理]メタロ-β-ラクタマーゼ (metallo-β-lactamase) は, 活性中心部に亜鉛を1_2分子持っています。この亜鉛に結合している不安定状態の水分子がβ-lactam剤のラクタム環に直接作用して加水分解を起こさせ, それによりβ-lactam剤を不活化します。ジピコリン酸 (dipicolinic acid: DPA) は, ピリジンの置換誘導体で, ピリジン環の2, 6位にそれぞれカルボニル基が結合した化合物(化学名: 2,6-pyridinedicarboxylic acid) で, 金属キレート剤として知られています。菌体から産生されたメタロ-β-ラクタマーゼは, DPAによって活性中心部の亜鉛がマスキング (masking) され, それによりβ-lactam剤の加水分解能が阻害されると考えられます。

[検出方法]ジピコリン酸を用いたメタロ-β-ラクタマーゼ検出のスクリーニング試験は, 微量液体希釈法によるCAZとCAZ/DPA, またはIPMとIPM/DPAの薬剤感受性試験のMIC値から判定します。セフタジジム (CAZ) の成績が耐性で, かつイミペネム(IPM)の成績が中間または耐性となった菌株について, CAZ/DPAまたはIPM/DPAのMIC値を測定し, このMIC値が各単剤のMIC値より“3管 (2^3) 以上”感性 (低いMIC値) となった場合に被検菌のメタロ-β-ラクタマーゼ産生を疑います。しかし被検菌によっては偽陽性となる場合が稀に見られる場合がありますので, 最終的にはPCRなどによる耐性遺伝子の確認試験を実施します。

(栄研化学・馬目 功)


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