05/12/28
06/01/10
■ MIC測定にあたっての溶媒
【質問】
 ○○大学□□学専攻, 修士1年の●●といいます。

 今, 抗菌試験を行うための準備をしています。使用するサンプルはカプリル酸, カプリン酸, ラウリン酸などの脂溶性物質です。使用するにあたって溶解するにはジメチルスルホキシド (DMSO) を使うということを文献から知り, 使用しました。しかし最初に溶解したときに溶解しきれておらず (もやもやした状態), MIC試験をするために1000 mMから段階希釈をして培養したところ, 白濁してしまいました。DMSOの最終濃度は2%にしました。9.8 mlの培地にサンプル0.2 ml (DMSOに溶解したもの), 菌液0.1 mlの割合で行っています。文献を読むと脂溶性物質の溶媒はDMSOであるとあるのですが, 他に菌に影響しないものでどのようなものがあるのですか??? またなぜ最終濃度が2%なのですか??? よろしくお願いいたします。

【回答】
 まず, どのような“菌”を対象に試験しているのか, どのような液体培地を用いて試験しているのか, 記載されていないので, 正確には回答できません。従って, 一般論として回答します。

 まず, MIC測定の原理を考えてください。私達の臨床検査では, 用いる培地の種類は厳密に定められていますが, 貴君の場合は“研究目的”ですので, 試験対象とする“菌”が, いつも (再現性), 充分に (培地性能) 発育するのであれば, どんな種類の培地を用いてもかまわないということです。試験薬が溶ける“油”のなかで, 試験する“菌”が発育すれば, その油を培地にしてもよいということです。

 DMSOは, 私達もしばしば水に溶けない薬剤を溶かす時に用います。使用するにあたってのコツは, まずDMSOだけでl,000μg/ml以上の濃度に溶かし, さらにDMSOそのものを希釈液として試験濃度の100倍濃い2倍希釈系列を作成し, 各希釈濃度の溶液 (DMSO 100%) を目的とする試験濃度に培地 (水) で一気に希釈することです。DMSO以外にも, ethyl alcohol, polyethylene glycol, carboxy methyl cellulose, glacial acetic acidなど, 様々な溶媒が応用されます。最終濃度 2%についてですが, 研究目的であれば“2%”にこだわる必要はないと考えます。初めにも書いた試験条件が満たされればよいと考えます。臨床検査 (ヒトという水環境を相手にしている) の場合には, 極力DMSOなどの溶媒は最終濃度を低くして試験します。通常1%以下で試験しています。私が貴君の実験を行うとすれば, まず試験する脂溶性物質が試験したい濃度で溶解している条件を見つけます。次に試験する“菌”がその条件で菌発育するような培養条件 (主に培地) を見つけるように試みるでしょう。頑張ってください。

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 MIC値の実験で使用する溶媒について質問した者です。詳しい回答をありがとうございました。わかりにくい質問で申し訳ございませんでした。菌は黄色ブドウ球菌を使用していて, 培地はトリプトソイブイヨン培地を使用しています。DMSOで1000μg/mlの濃度にして溶解しましたが, 既製品であるサンプル (カプリル酸, カプリン酸のトリグリセライド) は溶けませんでした。グリセリンも使ってみたのですがサンプル0.1 mlに対して2 mlの溶媒を入れても溶けませんでした。回答にあったような, ほかの溶媒で検討してみようと思います。


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