05/05/16
■ MRSA健康保菌者について
【質問】
 50代の内科医師です。20代の女性が妊娠中に肺炎に罹患し, 肺炎はきれいに治ったのですが, 入院時に喀痰からMRSAが検出されました。今回の肺炎の起因菌とは考え難く 元々健康保菌者であったと考えられます。その後, 半年以上にわたり, 喀痰からMRSAが検出されましたが, 今回無事出産も終わりました。症状はないのですが, 膣分泌物からもMRSAが検出されました。母子ともにまったく健康です。問題は, この患者さんが保育士で, 乳児を担当する仕事をしております。一般的なMRSAに対する注意は必要としても, 仕事を普通に続けることにどう助言すべきか困惑しております。また, 喀痰, 膣からMRSAが見つかる保菌者ですので, 除菌も困難と思いますが, 何か御助言をお願いいたします。

【回答】
 20代の女性で, 喀痰や膣分泌物からMRSAが検出されているが, まったく健康であるとのこと。恐らくは肺炎で病院に入院した期間中に保菌状態になったことが考えられます。退院後も喀痰や膣からMRSAが検出されているとのこと。現在は退院されており, MRSA汚染のない市民社会で生活をされているのであれば, 現在も検出されているMRSAも他の常在菌に駆逐されて行くでしょう。中途半端な除菌を行いますとかえって定着を促すことも考えられます。健康な女性であるならば, 自然回復力に期待するのがよいでしょう。また現在, 保育士をされ, 乳児を担当する仕事をされているとのことですが, 病院内ですか, 院外ですか。院内勤務となりますと, 日和見感染者への伝播の危険が生じてきます。また, 乳児を扱うことは, 保菌者であればやはりMRSA汚染の危険がありますので, 危険性のない部署の勤務がよいでしょう。1〜2カ月後に, 再度, MRSAの検査を行って下さい。

(近畿大学・古田 格)


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