06/01/17
■ MRSAとMSSAの違いについて
【質問】
 はじめて投稿させていただきます。私は検査センターで細菌検査をしている●●と申します。今回, MRSAとMSSAの違いについてご教授いただけたらと思い, 質問した所存です。

メチシリン (オキサシリン) に耐性か感受性かで区別され, MRSAはmecA遺伝子を有し, β-ラクタム剤の細胞壁合成阻害に抵抗を示すというところまで調べました。私は検査センター勤務なので, 臨床でのMRSAの問題点など, 詳細に教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

【回答】
 ひとつの課題を理解するのに, まず“その歴史を学ぶこと”をお勧めします。いつ, どこでMRSAは見つかったのか??? 何故, その国では大きな問題となったのか??? 何故, 日本では問題視するのが遅れたのか??? 何故, やっと日本はMRSAが重大な問題だと遅れて認識するようになったのか??? 何故, 日本ではMRSAが急速に拡がり, いち早く世界一の蔓延率になったのか??? 等々・・・

 40年以上も前, 米国疾病管理センター (Centers for Disease Control: CDC) の発刊するMorbidity and Mortality Weekly Reports (MMWR) という小冊子に“メチシリンに耐性の黄色ブドウ球菌が発見された”という小さな記事を読みました。メチシリン??? 余り馴染みのある薬剤ではありません。調べてみると, 黄色ブドウ球菌のもつペニシリナーゼによる分解を受けないペニシリンのひとつです。何故, こんな使いもしない薬に耐性の菌が問題になるの??? いろいろ調べてみると, 米国では特に術後の感染症を防ぐのに, また黄色ブドウ球菌の感染症の治療に, 有効で, 安価な抗菌薬としてしばしば使われていることがわかりました。これは彼らにとって大問題です。昨日まで第一選択薬として使ってきた薬が使えない訳ですから・・・ところが日本では, 黄色ブドウ球菌の治療には, 比較的高価なセファロスポリン系の抗生物質が頻用され, 安価なペニシリナーゼ抵抗性ペニシリンなんてほとんど見向きもされていなかったのです。日本でこれが大問題だと認識されるようになったのは, メチシリン (ペニシリナーゼ抵抗性ペニシリン) だけではなく, MRSAがセファロスポリンにも耐性だとはっきりしたからです。この間, 米国での発見から我が国での認識との間に約20年の期間がありました。正しく認識できなければ, 有効な予防策はとれません。気が付いてみたら, 分離される黄色ブドウ球菌の内, MRSAの占める比率はMRSA患者の隔離ができるレベルを遥かに超えていたという状況でした。この間, どうしたら正しくMRSAを検査室で検出, 確定できるのか, どのような遺伝子がこのMRSAの性状を決めているのかといった研究も進みました。MRSAについて詳細にということですが, 貴君の視点がどこにあるのか分かりません。ほとんどの情報は公開されていますから, 得られた情報から, その奥になにを読み取るのかは貴君の感性と能力次第です。

(琉球大学・山根 誠久)


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