■ MRSA陽性患者の再検査について | |
【質問】
30代の看護師です。私の病院では入院時はすべての患者に, その他, 手術前や感染防御機構低下時などにMRSA検査を実施しておりますが, 「陽性」の場合の“再検査”の方法というのが,「毎週1回以上, 陽性部位を検査する。2週間以上かつ3回以上続けて培養結果が陰性の場合を非感染者とする」としています。エビデンスに基づいた方法なのかどうか, また正しい再検査の方法 (検査時期や回数など) や非感染者とする定義などがありましたら教えていただきたいと思います。 【回答】
(1) 培養検査で, すべての患者のMRSA保菌状態を検出できるか???
(1) すべてのMRSA保菌患者を培養で見つけることは困難です。なぜなら, MRSAが皮膚や傷口, 粘膜などに付着しても, 培養が陽性になるまでは数日かかります。つまり時間差があります。したがって, 便宜上入院48時間以内にMRSAが検出されれば,「持ち込み例」とします。それ以降は「院内感染例」とするのが一般的です。これは便宜上の区別です。MRSAの保菌は, 咽頭, 鼻腔, 喀痰, 気管切開部, 褥創や皮膚炎の病変部, 陰部, 尿道カテーテル留置尿, カテーテル刺入部, 臍部 (新生児) など, 多岐にわたります。このような状況を考えると, すべてをスクリーニングで見つけ出すことはできません。 (2) 米国や英国のMRSAに関するガイドラインを見てみると, やはり3回以上「陰性」で, 除菌ができた, あるいは非保菌者としている ようです。ただし, 鼻腔除菌しても, 80%は1ヶ月以内に再保菌することも記憶にとどめておいてください。3回というエビデンスはないと思います。恐らく, この3回の起源は, 陰性か陽性かの確率は1/2, それを3回ですから, 1/2の三乗で, 1/8になりますから, おおよそ1/10の確率に下がるということを意味しているのではないかと推測します (3) 保菌スクリーニングの対象は, 過去の保菌者, 入退院が頻繁, 多病院からの転院, MRSA高頻度検出の病院からの転院, 老健施設に入所していたなどがMRSA保菌の高リスク患者となります。一方, MRSA感染症を発症する危険性が高い患者は, ICU/NICU入室患者, 熱傷患者, 臓器/骨髄移植患者, 心臓血管外科患者, 整形外科患者, 透析患者などです。保菌調査の部位は, 咽頭, 鼻腔, 喀痰, 気管切開部, 褥創や皮膚炎の病変部, 陰部, 尿道カテーテル留置尿, カテーテル刺入部, 臍部 (新生児) など, 回答の(2) に示したとおりです。 〔参考文献〕
(京都府立医大・藤田 直久) |