06/08/17
■ MS寒天培地でのグルカン合成
【質問】
 いつも拝見して, 参考にさせていただいています。Mitis-Salivalius (MS) 寒天培地について質問があります。

 MS寒天培地上でStreptococcus mutans を培養すると, グルカン合成によりコロニーに水滴が見られると言うことが言われています。実際, 私たちも実習で行っているのですが, たくさん見られたり, 全然見るられなかったりと, 毎回違う結果が得られてしまいます。使っている菌株も同じものを用いていて, 特に培養条件も変えているつもりはありません。グルカン合成が見易い培養条件などがありましたら, 教えていただけませんでしょうか。よろしくお願い致します。

【回答】
 “MS寒天培地上でStreptococcus mutans を培養すると, グルカン合成によりコロニーに水滴が見られる” という現象が理解し難いのですが, 起伏のある集落形態の一部が “水滴様” に見えるということなのでしょうか??? もし集落そのものではなく, 集落表面に水滴が現れるのであれば, 培養時の湿度が関与している可能性もあります。 S. mutansは, MS (Mitis-Salivarius) 寒天培地上では, 白糖から非水溶性・粘着性の菌体外グルカンを産生し, 盛り上がりのある辺縁部が不規則なラフ型集落を形成します。また色調は淡青色で起伏があり, 表面はザラザラした“すりガラス状”の外観であると言われています。

 質問の “グルカン合成が見易い培養条件” について回答します。

 MS (Mitis-Salivarius) 寒天培地には白糖が多く含まれ, 嫌気培養を24時間37℃で行った後に, さらに24時間室温で大気中に放置すると, 白糖から生成される菌体外多糖の有無や性質によって, 菌種ごとに特徴的な集落を形成するとされています。嫌気培養は48時間されることもあると思いますが, 嫌気培養の後に大気中で24時間の放置をされていますか??? おそらく嫌気培養の後に大気中に放置することによってグルカンの形成が促進されたり, 菌種ごとの性質の違いが現れるものと推測されます。

 もう1つ考えられることは, MS寒天培地の発育支持力の問題です。この培地に限らず, すべての培地について言えることですが, 作りたての培地が最も発育支持力が高く, よく発育します。したがってグルカンの形成も活発になるものと推測されます。古い培地と新しい培地とでは当然発育の仕方は異なりますし, 同じ日に作成した培地であっても, 保存状態によって微妙に違ったりすることもあります。たとえば培地の水分量なども影響するかもしれません。培養器内の湿度を高めることも大切かもしれません。

 回答者自身も, 特にグルカン形成の検討を行った訳ではありませんので, 他にも要因があるかも知れません。この回答の内容も含めて, いろいろと試されてみたらいかがでしょうか。最適の培養条件を見つけ出して, この「質問箱」にも紹介して下さい。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


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