■ Neisseria cinereaが血液培養から | |
【質問】
はじめて質問させていただきます。当院の患者さんから血液培養にてNeisseria cinereaが検出されました (ここ数年来, はじめて経験する菌です)。30才代の男性で, 中国広東省へ旅行してきた後, 発熱, 下痢が続き, 敗血症で入院となった患者さんです。検査所見は炎症所見が強く, DIC傾向で, 便培養 (−), 肺炎所見 (−) でした。尿培養は未検査です。患者さんは旅行先でかき氷を食べたとのことです。ナイセリア属の一種で, 常在菌で日和見感染を起こす菌とのことですが, 関係する文献が少なく, 基本的な質問で申し訳ありませんが, 下痢と検出された菌の関連性があるのか否か, もしくは他の因果関係があるのか質問します。よろしくお願い致します。なお、微生物検査は外部委託です。 【回答】
下痢との関連性についてのご質問ですが,腸管感染は文献的には8歳男児の直腸炎の報告があるのみです。N. cinereaを含めNeisseria属レベルで見ても腸管感染は稀であり,今回の患者さんの下痢は,他の下痢原性微生物が原因ではないかと推測されます。おそらく受診時には病原体が消失,または検出限界以下まで減少していた可能性もあります。あるいはウイルス感染なども推測されます。引き続く下痢により体力が奪われた状態で,本菌が血中へ侵入したとも考えられます。 ただN. cinereaは細菌学的にはNeisseria gonorrhoeaeとの鑑別が難しいとされ,またPCR検査においても淋菌用の試薬と交差反応を示すことが知られています。しかも, 淋菌だと血液培養で陽性となる場合もあります。淋菌と誤同定されている事例も存在するのではないかと思われます。 (公立玉名中央病院・永田 邦昭)
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