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【質問】
はじめまして。原薬を製造している会社で微生物検査を担当している■■と申します。「日本薬局方」記載の培養期間の許容範囲について御教授お願いいたします。
「微生物限度試験」MF法 記載内容
少なくとも5日間培養後、集落数を計測する。
信頼性の高い集落数の計測値が得られたと判断される場合に限り、
培養後5日以前の計測値を採用しても良い。 |
〔質問その1〕
少なくとも5日培養という場合は, 時間単位に置き換えると, やはり120時間以上の培養が必要なのでしょうか???
120時間に関しての“許容範囲”は, 微生物の発育速度を考慮した場合どれぐらいになりますか???
〔質問その2〕
当方では, 公定書に記載されているもので, 比較的培養時間の短い培養での許容範囲を確認したところ,
以下のようになっているので, 培養期間に対する許容範囲を5% (120時間であれば±6時間)
としたいと思っているのですが, “微生物学的に妥当性”はありますか???
また, この設定に対しての“バリデーションは必要”だと思いますか???
「日本薬局方」大腸菌 18〜24時間 (中心値の21時間に対して許容範囲14%)
「食品衛生検査指針」細菌 48±3時間 (48時間に対して許容範囲6%)
〔質問その3〕
JP記載内容に「信頼性の高い集落数の計測値が得られたと判断」とあるのですが,
どのような根拠を持って“信頼性の高い集落数”を立証すればよいのでしょうか???
やはり製品検査では, 公定書に記載されている内容を遵守する必要はあるが,
詳細としては各事業所で運用を決めれば問題はないと思っているのですが,
この認識は間違っていないでしょうか??? (例えば「5日間を120時間と考え, 許容範囲は5%とする」など)
色々質問をしてしまって申し訳ありません。でも, このサイトを見つけたときは「救世主が現れた!!!」と小躍りしてしまいました。これからも色々と勉強させていただきたいと思っております。どうぞ,
よろしくお願いいたします。
【回答】
「日本薬局方」記載の培養期間の許容範囲は,「日本薬局方」記載を基本にして,
試験者が各自のサンプルに対するバイバ_デンのデ_タに基づき設定してください。質問者は“培養時間”のことだけを質問していますが,
“培養温度”も重要な条件です。ご存じのように, 微生物の発育には“培養温度”と“培養時間”が密接に関係しています。
〔回答その1〕
質問者は,「微生物」と漠然と質問されていますが, 微生物によって発育速度は異なります。細菌と真菌を比べると理解しやすいと思います。一般的に,
何日間培養という記載は, 何時間培養というよりも大雑把です。ル_チンワ_クを考慮すれば,
5日間の場合, “5日目”と考えてよいと思います。この場合, 培養開始が, 午前中か午後かぐらいの考慮が必要です。
〔回答その2〕
「培養期間に対する許容範囲を5% (120時間であれば±6時間) としたいと思っている」ということですが,
ル_チンワ_ク上無理でなければ, 問題ないと思います。“微生物学的な妥当性”は,
バイオバ_デンを調べないとわかりません (微生物叢によります)。「日本薬局方」記載の通り行う場合でも,
“バリデーションは必要”です。
〔回答その3〕
“信頼性の高い集落数”を立証するには,
種類の異なるサンプル毎 (例: 乳糖, 無水乳糖, ステアリン酸マグネシウムなど)
のバイオバ_デン調査から得られた微生物か, それと同等の標準菌株を入手して,
同等のサンプル (例: 乳糖をサンプルとした場合は, 乳糖から得られた微生物を接種保存し,
微生物をサンプルに馴染ませる) を用いて接種回収実験 (菌数, 培養時間, 培養温度,
培地などの要素を組み合わせた実験) をし, 得られたデ_タを統計処理することにより立証できます。実験条件を設定するためには,
質問者の施設にあった計画を立案することが重要です。
「製品検査では, 公定書に記載されている内容を遵守する必要はあるが,詳細としては各事業所で運用を決めれば問題はないと思っている」という認識は間違っていないと思います。ただし,
各事業所の品質管理室間で, 技術や知識の内容に大きな差がないことが前提になります
(会社組織全体としての精度管理体制の確立が重要です)。
【質問者からのお礼】
ご回答して頂き, 本当にありがとうございました。個人的な考え方ではありますが,
今まで製品検査は公定書 (JP) 従った試験をする事が大切と考え, いかにJPに準拠させられるかを考えておりました。しかし品質の本質を考えると,
工程状況を考慮した“バイオバーデン”が重要だということがわかりました。今までバイオバーデンということ自体を考えたことがないため,
また「JARMAM」読んで勉強させて頂きます。本当にありがとうございました。
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