05/07/19
■ “ニキビ”と嫌気性菌
【質問】
 私は●▲と申します。現在, エステティック・スクールに通っています。

 “ニキビ”について調べていたのですが, 嫌気性菌とアクネ菌と皮膚常在菌についてよく解りません・・・。どこに住んでいて, どういったかたちでそれらの菌が“ニキビ”と関係しているか, 深く教えていただけませんか??? このような初歩的な質問は恥ずかしいのですが, 解りやすく教えていただけたら幸いです。宜しくお願いします。

【回答】
 アクネ菌 (学名: Propionibacterium acnes) は嫌気性菌の仲間にいれられている細菌です。先ず嫌気性菌について説明しましょう。嫌気性菌とは酸素ある環境ではほとんど増殖できない, あるいはそのような酸素のある環境で死滅してしまう細菌です。従って, 酸素の少ない, あるいはない環境でしか生息できない細菌です。地球上にはそのような環境がいたるとことに存在します。私達人間や動物の身体の皮膚や粘膜表面 (口腔, 腸, 膣, 尿道) にも実はそのような環境があるのです。

 さて, エステティクス・スクールでは, 皮膚の解剖学を勉強するのではないでしょうか。皮膚の組織の模式図を思い出して下さい。細菌は皮膚の表面に集団で (マイクロコロニーと呼びます) 存在します。また, 皮膚の毛根の管の中にも集団で生息しています。管の表面 (毛孔) に近いところ (外気に近いところ)にはある種のかび, 少し深い所 (酸素が少ないところ) にはブドウ球菌が, そして最も深いところ (酸素がほとんどなく, 嫌気的なところ) にはこの“アクネ菌”が増殖しています。アクネ菌は, 皮脂腺の皮脂が大好物で, それを栄養にしています。この時, アクネ菌は他の細菌に対して殺菌力のある脂肪酸を作り, 私達の皮膚につく病原性の強い細菌の増殖を抑える役割を担っています。顕微鏡では, こん棒状に見えるグラム陽性の桿菌です。アクネ菌は, だれにでも, ある程度の数はいる皮膚の常在菌なのです。さて, 皮脂腺からの皮脂の分泌量の増加に伴い, 2歳くらいからアクネ菌は皮膚に安定してみられるようになり, 成長とともに増加して, 思春期の頃にその数は最も多いピークになります。皮膚の1 cm平方の面積を綿棒で強く擦ったものを専門家が培養すると, 擦る場所によって違いますが, 5〜10万個のアクネ菌が見つかります。“ニキビ”ができやすいといわれている場所にはより多くのアクネ菌が見つかります。顔面や左右の肩甲骨の間に多く, 手のひらにはほとんどいません。この菌が“ニキビを悪化させる”ということが分かっています。“ニキビ”とは思春期に毛穴のところに一致してできる慢性の炎症です。思春期には, 性ホルモンの分泌増加によって, 皮脂腺の働きが活発になり, 上皮の角化異常と炎症がしばしばおこります。皮脂を栄養としているアクネ菌の増殖も活発になるのですが, これが異常に強くなると, アクネ菌が分泌する酵素 (リパーゼ) や代謝産物 (プロピオン酸など) の悪い影響が強くなり, 管の中に留まらず, 組織の中に侵入して増殖し, 炎症を起こし, それを悪化させてしまうのです。最悪の場合には, そこにブドウ球菌などのアクネ菌以外の細菌も増殖して膿汁 (うみ) が溜ります。こうなると“青春のシンボル”などとは言っておられません。抗生物質による治療が必要になります。

(岐阜大学・渡邉 邦友)


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