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【質問】
失礼致します。私は検査センターで細菌検査をしている臨床検査技師です。先日,
肺膿瘍の検体からノカルジアらしき菌が検出されました。サブロー培地に接種したところ,
5日くらいで粉っぽいコロニーを確認しました。Kinyoun染色で弱抗酸性の樹枝状の菌体が確認できました。これらのことから“ノカルジアと断定”してもよろしいでしょうか???
【回答】
文面から推測する限り, 検出菌種はNocardia 属と思います。臨床的に重要なNocardia
属の同定培地はカゼイン寒天培地, チロシン寒天培地, キサチン寒天培地 (BBL)の市販品が入手可能ですが,
稀にしか検出されませんので, これらの培地を常備するのも限界があると思います。臨床材料からのNocardia
sppは部分的抗酸性を示しますので, 抗酸性と非抗酸性の桿状またはフィラメント状が観察された場合にはNocardia
を示しています。しかしNocardia の抗酸性は変化しやすいため, 1%硫酸水を用いる変法Kinyoun染色を用いるのが良いでしょう。また集落からの抗酸性は脂質含有濃度に依存して変化します。小川培地などからの集落はサブロー培地に比べ抗酸性は明瞭に観察されます。染色性,
形態からNocardia sppとしてよいかという質問ですが, 染色および形態は菌種同定の補助試験ですが,
Nocardiaの同定試験項目は検査室の能力を超えた試験でもあります。顕微鏡形態と少数の生理学的試験で推定分類が可能ですので,
実施してみてはいかがでしょうか。形態はスライド培養 (オキサノグラム培地)
25℃培養で菌糸を確認することが重要です。グラム染色では陽性の植物根やフィラメント状も参考になります。集落形態は白色,
粉状集落は菌糸の発育を反映した形態です。しかしNocardia sppの集落形態は多種多様で,
培地と培養温度に依存します。我が国で報告の多いNocardia asteroidesの多くはオレンジからピンク色を呈します。下記に写真を添付いたします。参考にして下さい。
●スライドカルチャー
●グラム染色 (喀痰)
●サブロー寒天培地 (N. asteroides)
●変法Kinyoun染色
(琉球大学・仲宗根 勇)
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