05/02/08
尿中肺炎球菌抗原検査について
【質問】
 650床ほどの公立病院に勤める臨床検査技師です。1月より「尿中肺炎球菌抗原検査」が保健適応となり, 医師より尿中肺炎球菌抗原検査を実施して欲しいとの要望がありました。教えて頂きたいのですが, 喀痰のグラム染色と尿中肺炎球菌抗原検査とでは相関があるのでしょうか。グラム染色と尿中肺炎球菌抗原検査, それぞれに精度と特異度で特徴はあるのでしょうか??? 尿中肺炎球菌抗原は結果が出るまでに15分しかかからず, 不明熱などの迅速検査としては有用性は高いと思うのですが, もし不明熱の患者様が尿中肺炎球菌抗原と喀痰の培養をオーダーされた場合に, 尿中肺炎球菌抗原が陽性となった時は喀痰の保健請求は可能でしょうか。また, 尿中肺炎球菌抗原検査を導入する際の注意点などありましたらお教え下さい。慣れない文章で申し訳ありません。

【回答】
 添付されている性能書を見ますと, 喀痰のグラム染色との相関, 喀痰培養検査あるいは血液培養検査を参照法とした時の感度, 特異度は, 期待する程, そんなに高くはないという印象をもっています。喀痰培養法を参照法とした場合の感度 61.3%, 特異度 72.1%という数値は, 予想以上に偽陽性, 偽陰性が発生することを予感させます。添付文書には, “検査の限界”としてそのことは明記してありますが, 実際の臨床の現場では, この試験が「陽性」になったからといって肺炎球菌を原因菌として治療を開始していいのか, またその逆に, 「陰性」になったからといって, 肺炎球菌が原因である可能性を否定してよいのかとなると大変悩ましい状況が発生するであろうと思います。個人的な意見としては, やはり迅速性に優れたグラム染色が優先すると考えます。グラム染色で肺炎球菌が強く疑われれば, 抗菌剤治療を開始すべきですし, 翌日には培養・同定結果が出る筈ですから, empiric therapyの期間もせいぜい1日までです。

 ただ, 紹介患者を受け入れる医療機関では, 既に抗菌剤が盲目的に投与され, 肺炎球菌が検出できないということをしばしば経験します。そのような場合には, 後視的に原因菌を検索する方法として抗原検出は有効でしょう (臨床的有効性はありませんが)

 保険請求の件は, 断言できません。国保, 社保でも違いますし, 都道府県単位でも認識が異なります。ただ, 添付文書には, その点が否定的には記載されていませんので, 培養検査と抗原検査のいずれもが認められる可能性はあると考えます。

(琉球大学・山根 誠久)


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