04/08/18
■ 尿中細菌定量について
【質問】
 はじめまして。私は某検査センターの細菌室で働いている者です。最近, 泌尿器科のドクターから「尿での菌検出率が低いのでは???」という指摘をうけました。指摘のあった尿培養の培地 (羊血液/BTB) には2〜3コロニーの発育があり, 再検でも同じでした (まったく発育のないのもありますが)。尿の定量培養では10の3乗未満は「陰性」で報告しているのですが, 10の3乗未満でも臨床的意義があるのでしょうか??? 尿路感染症の指標は10の5乗以上ですよね。今後, 尿中細菌定量でどこまで報告したらよいのか, 分からなくなってしまいました。尿中細菌定量についてお教え下さい。宜しくお願いします。

【回答】
 尿路感染症の診断には, 有意の細菌尿を確定する必要があります。そのためには細菌汚染による影響を最小限とする尿採取法を用いて, 尿中細菌定量培養検査が行われています。一般的な判定基準として, 中間尿では10^5 CFU/ml以上, カテーテル尿では10^4 CFU/ml以上, 臨床症状があり, 単独菌種では10^3 CFU/ml以上です。単純性膀胱炎では, 大腸菌, Proteus属, Klebsiella属, Staphylococcus saprophyticusなどは10^3 CFU/mlでも原因菌と考えて治療を行うべきとの文献(1)や膀胱内 (尿中) で増殖しにくい細菌が原因菌であった場合, 尿が低張, 強酸, 強アルカリ性であった場合, 多尿を呈した場合, 化学療法施行例では, 尿中細菌数は10^5 CFU/ml以上に達しない場合もありますので, 連続培養によって, 同一菌種がほぼ同等の菌量で証明された場合には, 10^5 CFU/ml未満 (多くは10^4 CFU/ml) であっても“細菌尿”として判定してもさしつかえないとの文献(2)があります。当院では治療経過の観察の場合を考慮する必要から, 10^3 CFU/ml未満においても報告しています。

[参考文献]
(1) 那須良次, 公文裕巳: 下部尿路感染症. 検査と技術 増刊号 24: 111〜114, 1996.
(2) 宮本昭正, 水島 裕(編): 腎・尿路の感染症. 今日の内科学 (第2版) 920〜927, 医歯薬出版, 東京, 1988.

(愛媛大学・村瀬 光春)

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