■ 尿道カテーテル留置時の消毒薬 | |
【質問】
私は看護師をしています。現在,尿道カテーテル留置時の消毒には0.02%のステリクロン使用しています。しかし,様々な文献では10%ポビドンヨードがよいといわれていますが, ポビドンヨードは外陰部の粘膜への刺激が強過ぎるのでは???と思っています。0.02%のステリクロンでは効果が得られないというエビデンスはありますか??? また10%ポビドンヨードが粘膜への刺激になるというエビデンスはありますか??? レベルの低い質問で申し訳ありません。よろしくお願いいたします。 【回答】
尿道カテーテル留置時の感染予防の面からの注意点は (1) 無菌的挿入, (2) 閉鎖式システム, (3) 挿入部の清潔保持 (維持管理) です。では, (1) の無菌的挿入について英国のガイドライン (文献1) には, 短期留置尿道カテーテル挿入時の注意として (抜粋ですが): (1) カテーテル挿入に関して訓練された能力のある医療従事者が, 無菌的手技により挿入する (2) カテーテル挿入前には陰部 (尿道口周囲) を清潔にする (3) 尿道損傷や感染を最小限にするために適切な使い切りの (シングルユース) 潤滑剤を使用する, となっており, 消毒剤の使用は記載されていません。そして専門家の意見として, カテーテル挿入前の洗浄に消毒剤を使用する利点はないとしています。また国立大学医学部附属病院から出されているガイドライン (文献2) で「尿道カテーテル管理」の項には,「無菌手技と滅菌器具を用いて行う」としか記載されていません。となると, 尿道口周囲で石鹸を使用して洗浄し, 清潔にしてやれば, 消毒剤は必ずしも必要ではないのです。しかし一方で, 標準予防策実践マニュアル (南江堂) (文献3) では,「滅菌手袋を着用し, 消毒は10%ポビドンヨードで尿道口周囲を消毒」となっています。意見がわかれるところでしょうか??? 結論は“尿道口周囲がきれいであれば, 必ずしもポビドンヨードで消毒しなくてもよい”ということになります さて, 適用についてですが・・・消毒剤イソジン液 (明治製菓) の添付文書には, 効能・効果の部分に, 手術野の皮膚・粘膜消毒と書かれてありますので, 使用には問題はないと思います。ただし, 十分に乾燥させないと皮膚炎が起こることがあります。逆にグルコン酸クロルヘキシジンが成分であるステリクロンW 液 0.02% (健栄製薬) の添付文書には, 同じく効能・効果の部分に, 泌尿器科における外陰・外性器の皮膚消毒となっており, 粘膜への使用は禁忌です。ステリクロンの製造メーカである健栄製薬にも尋ねてみましたが, クロルヘキシジンによる尿道口周囲の消毒効果に関するデータは少なく, エビデンスと言える研究ではありません。従って, 挿入時の陰部の清潔を保ってやり, 無菌的に挿入すれば問題ないということになります。さらに, もし消毒剤を使用するなら, ステリクロンは粘膜への使用禁忌であることを考慮すると, ポビドンヨードを選択すべきではないかと思います。日本看護研究学会雑誌 (2004年第27巻115頁) に外尿道口ケアに関する文献的検討がありますので, これをご一読ください 〔参考文献〕
(京都府立医科大学・藤田 直久)
|