05/07/21
05/07/25
■“Pseudomonas mendocina”について教えてください
【質問】
 はじめてご質問させていただきます。私は臨床検査機器メーカーで開発業務に従事しているものです。担当製品の測定系にバクテリアが繁殖していることが懸念され, バクテリア種が表記のPseudomonas mendocinaであることが判明しました。Pseudomonas mendocinaは緑膿菌の一種であると聞いており, 蛍光物質のようなものを産生すると判断しておりますが, なにか特徴はあるのでしょうか。さらに, このバクテリアを培養し, 調査したいと考えておりますが, まったく経験がありませんので, どういった方法で培養するべきなのかがわかりません。Pseudomonas属が通性嫌気性細菌であることから, 普通の温度のみコントロールできる恒温槽35℃, 12時間, 富栄養の寒天培地 (トリプチケースソイ寒天培地) を使って培養してみましたが, うまく培養されているのか判断できずにいます。そもそもPseudomonas mendocinaがこの培養方法で問題ないのかも定かではない状態です。ご返答よろしくお願いいたします。

【回答】
 測定機器内への菌の混入,特に色素産生菌は気がかりなことだと思います。Pseudomonas mendocinaは人からの分離は稀な弱毒菌ではありますが,ご質問のとおり緑膿菌の類縁菌であり,ムコイド型緑膿菌に認められるようなアルギン酸(alginate)を産生する菌株も認められます。しかしP. mendocinaは“non-fluorescent Pseudomonas ”に分類され,産生する色素は蛍光色素ではなく, “carotenoid pigment” で,これによって黄色 (yellowish color) 集落を形成すると言われています。

 本菌も含めてPseudomonas属は通性嫌気性ではなく, “偏性好気性”のグラム陰性桿菌です。培養温度は35℃で問題ないと考えられますが,培養時間は12時間では短過ぎると思います。多くの菌株は24時間以内に集落を形成すると予想されますが,菌株によって発育の良し悪しがありますので,2日間程度は観察したほうがよいと思います。本菌の栄養要求性は特に厳しくはなく,単純な組成の培地で十分だと考えられます。質問中にあるトリプチケースソイ寒天培地で分離可能だと思われます。ただ色素産生を確認したいのであれば“Kingの培地”が勧められます。“Kingの培地”にはA培地とB培地があり,蛍光色素 (fluorescin) の確認にはB培地が適しています。培地観察時に紫外線 (254 nm)を照射することによって,fluorescinであれば明瞭な蛍光を発するとされていますので,その他の色素との鑑別が容易となります。どの培地を使用するにしても,発育してきた菌の集落をグラム染色し,グラム陰性桿菌で, かつチトクロームオキシダーゼ試験陽性であればPseudomonas属が疑われますので,そのような集落を探すのが最初のステップだと思います。色素産生性は菌株によって強弱があると思います。P. mendocinaの同定は市販のグラム陰性桿菌同定キット (ブドウ糖非発酵菌用) で可能だと思います。必要に応じてご検討ください。

(公立玉名中央病院・永田 邦昭)


【質問者からのお礼】
 ご返答ありがとうございます。質問に対する回答が非常に詳細にわたっていて助かりました。今後どう評価をしていくのか, 今回ご紹介していただいた方法も盛り込んで対処したいと思います。また不明な点がありましたら質問させていただきます。


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