04/11/10
04/11/16
■ 卵黄反応陽性のグラム陽性桿菌
【質問】
 微生物実験をしている学生です。食品中におけるブドウ球菌の汚染状況を調べていた折, 卵黄加マンニット食塩培地上で卵黄反応を呈するマンニット非分解菌を分離しました。非選択培地上のコロニーは, 黄色ブドウ球菌に比べ小さく, 白い, つやのある丸いコロニーであり, グラム陽性桿菌でした。卵黄反応陽性でグラム陰性桿菌であったので, Bacillus cereusではないかと思ったのですが, 非選択培地上でのコロニーの辺縁が波状円形ではありません。また, 小型の白色コロニーを形成する桿菌という点から, Moraxella bovisではないかとも思ったのですが, グラム陰性ではありません。

 卵黄反応陽性, グラム陽性桿菌で, 他に何か考えられる菌をご存知でしたら教えていただきたく存じます。また, その菌を同定するための他の試験方法がありましたら教えてください。よろしくお願いいたします。

【回答】
 記載されたグラム陽性桿菌, 卵黄反応陽性からBacillus cereusが最も推定されます。マンニット非分解と記載されておりますが, Bacillus cereusはマンニット非分解, 卵黄反応陽性で白色_白色集落を形成します。質問では, 非選択培地で集落辺縁が波状ではない, 小型集落のためにBacillus cereusを否定しておりますが, 環境および他のサンプルから分離される菌株がすべて教科書に記載される形状をみせるわけではありません。検出されるすべての菌株は生息していた環境 (栄養状態, 酸素の有無, 温度, 湿度, pHなど) に影響されます。臨床検査の領域では, 好気性, 卵黄反応陽性, グラム陽性桿菌であればBacillus cereusを最も疑い, 他の性状検査を実施します。食品領域においては, 臨床材料とは異なるとは思いますが, 質問の情報のみではBacillus cereusが最も推定されます。菌種同定において重要なことは, 非典型的または初めて経験する集落が出現した場合には, グラム染色を確実に実施して, 他の性状試験を行うことが大切です。また, このような非典型的な集落が観察された場合には, グラム染色性が正確に染色されたか否かを確認するのも重要です。グラム染色性の確認には, “劉の方法”で確認すると良いです。

 グラム陰性桿菌で, 卵黄反応陽性を示す場合にはSerratia marcescens が最も疑われます。しかしS. marcescensはマンニット食塩培地では発育できませんので, 質問の菌種とは異なると思います。参考までにS. marcescensの卵黄反応 (食塩無添加培地) での反応集落を添付しました。

(琉球大学・仲宗根 勇)
【質問者からのお礼】
 丁寧なご回答, ありがとうございました。その後, Bacillus  cereusであると想定して, HI平板培地に塗抹した菌を1ヶ月間, 室温で放置し (芽胞形成の有無の確認), さらに60℃で30分加熱後に生育が認められるか否かを調べたのですが, コロニーに顕著な変化はなく, 加熱後に菌は検出されませんでした。
 また, 添付していただきました写真のS. marcescensとも様子が異なるようです。ご指摘の通り, 再度, グラム染色性の確認をしてみます。

[戻る]