■ レサズリン添加TG培地での嫌気度 | |
【質問】
お世話になります。●●製薬株式会社▲▲工場の品質管理チームに所属しております■■と申します。 現在, 日本薬局方に従った微生物試験を実施しております。その中で無菌試験, 特にそのTG培地に関してお伺いしたいと思います。TG培地には「レサズリン」がその嫌気指標として添加されていますが, これについてです。 (1) 購入したTG培地の中に, 無菌試験の14日間培養中に, 赤色部分 (ハイドロレサズリン部分) が培地 100mlの半分またはそれ以上になるものがあるのですが, これは嫌気性菌を発育させるのに問題はないでしょうか??? (2) 嫌気指標として, 培地の酸化還元電位を調べる方法があると聞きましたが, 実際にはどのくらいの電位があればよいのでしょうか??? 嫌気部分, 好気部分でどのくらいの電位があればよいのでしょうか???。 質問に挙げたとおりで, 実使用に当たって培養期間内に赤色部分が半分以上, またはそのほとんどが赤色になってしまう現象を認めた培地がありました。指標菌による発育性能を確認して, それが「適」であればよいかと思いましたが, 良いアドバイスや経験談などありましたらお聞かせいただきたいと思います。以上ですが, よろしくお願いいたします。 【回答】
1. 無菌試験における培養日数である“14日間経過時点で培地の淡赤色部分が上部 1/2以下にとどまるような表面積と深さの比をもつ容器”に所定量ずつ分注し, バリデートされた方法で滅菌, 2〜25℃で保存。 2. Clostridium sporogenes (所定の菌株) を1容器当り, “100個以下を接種して所定の培養環境で培養したとき, 3日以内に発育を示さなければならない”。 以上の要件を考えると, 14日間の無菌試験の結果, 菌の発育を見なかったものの, “上部1/2以上が淡赤色化した培地は上記要件の1を満たしていなかった”培地は (上記要件の2を満たしていたとしても)「嫌気性菌を発育させるのに問題があるか否か」ではなく, “(強制力のある) 局方上で問題がある培地であり, 検査であったことになります”。すなわち指標菌を用いて一定条件下で実施される培地性能試験およびバリデーション試験は, その時点での培地と指標菌の関係を示すにすぎません。実際の被検体に存在するかもしれない多様な嫌気性菌の場合や, あるいは指標菌と同一の菌種であれ, 生物活性が低下した状態であれば1容器あたり100個前後が存在しても, 増殖開始までに長期間を要することに対する配慮から, 14日間は嫌気性菌が増殖可能な状態として淡赤色となっていない部分が半分以上であることを規定しているわけです。 通常, 適切に製造・管理された粉末培地を使用期限内に調製・使用する場合であれば14日間培養後にも淡赤色に発色するのは上部1/3以内に収まる筈ですので, 上記要件の1にある表面積と深さの比についての見直し, あるいは局方に記載のある「使用前還元」, すなわち「培地の上部1/3以上が淡赤色となったならば, その淡赤色が消失するまで・・中略・・1回だけ使用できる」について見直しされることを勧めます。なお, 酸化還元電位を下げる目的で処方されているチオグリコール酸ナトリウムは, 培地に添加されない状態 (試薬単独) でも長期間, 大気に曝されていると酸化してしまいますので, 粉末培地の保存管理も見直す必要があるかもしれません。 (2) 空気に接触している通常の培地 (pH 7で) の酸化還元電位は+0.2〜+0.4 V であり, 一般的な偏性嫌気性菌は酸化還元電位が−0.2 V 以下でないと増殖しないとされています。好気部分の酸化還元電位がどの程度であればよいかについては明確な数値をお示ししにくいのですが, 増殖に酸素が必須な偏性好気性菌の代表たる P. aeruginosa の増殖は概ね本件培地 (TG培地) でいえばレサズリンが発色している部位に限られると言えます (ただし, 培地中に硝酸塩が存在すれば P. aeruginosa に限っては嫌気条件下でも発育します)。 (極東製薬工業・江成 博)
【質問者からのお礼】
お世話になります。御回答ありがとうございました。大変参考になります。あれ以後, 当該培地の1/2以上発色の原因を調査したところ, 培地の流動性が高かったためであろうと考えられる結果を得ました。寒天濃度に由来すると思われ, 成分の見直しなどを考えているところです。仰るとおりに, 使用前還元も考慮して今後の扱いを考えて行きます。酸化還元電位, 理解しました。参考とさせていただきます。一般の文献にはやはり記載がなく, 調べきることが出来ませんでした。ありがとうございました。また今後, 質問ありましたら投稿させて頂きます。ありがとうございました。 |