04/12/21
04/12/24
■ 淋菌の塗沫・培養検査の有用性について
【質問】
 ○×の検査センターに勤務している検査技師です。当センターで, 尿, スワブ検体の淋菌検査を某メーカー・キットによるPCR法で実施しておりますが, ある病院の医師から「現在使用しているキットで尿を用いた検体で行うと検出率の信頼性が低いので塗抹と細菌培養を並行して検査を行って欲しい」。また, スワブ検体のみ提出している病院の医師からは同じような理由から,「PCR法と臨床症状, 診断と照らし合わせ, キットの陽性基準に疑問があるので, 塗抹と細菌培養を並行して検査を行って欲しい」と言う要望がありました。確かに, 現在使用しているキットは, 昨年あたりから交差反応や女性尿を用いた場合の問題点があるようです。このような場合, 医師の言われるように, PCR法と並行して塗抹と細菌培養を行った方がよろしいのでしょうか??? よろしくご教示ください。

【質問】
 当然, 塗沫と細菌培養を行うべきです。その理由は, 貴方自身が“昨年あたりから交差反応や女性尿を用いた場合の問題点があるようです”と感じているからです。検査を担当する者が, その検査の性能・精度に疑念をもつのなら, その対策をとるのは当然のことで, 検査に関わる者の道義的責任です。

 個人的な意見としては, 世の中, 何故こうも淋菌を対象としたPCR検査を実施するのか, 大いに疑問に思っています。何故なら, 淋菌感染には不顕性感染がなく, すべて発症します (症状がある) 。しかも, 性器・咽頭など, 検体は容易に採取でき, さらに検体中の菌濃度も充分に高い。塗沫・培養検査で充分, 検査診断できる感染症です (この点, 不顕性感染がほとんどのクラミジアとは違います)。厚生労働省が保険定数を付けたからPCR検査を実施するというのが隠された本当の理由で, 膨大な医療費の削減が叫ばれながら, 本音と建て前の矛盾を感じています。臨床症状, 診断と照らし合わせておかしいというその臨床医を尊敬します。あの万能のPCRの結果を疑っている訳ですから, 盲目的なPCR信者ではないということです。もうひとつ考えてください。臨床検査を担当する者として, 淋菌検査では, 偽陽性と偽陰性とではどちらが罪深いですか・・・私は偽陽性が罪深いと思うのですが。

(琉球大学・山根 誠久)
【質問者からのお礼】
 淋菌の塗抹と細菌培養の有用性について適切なご回答ありがとうございました。ともかく質問の翌日に回答していただいて, 恐縮しております。さらに, 先生の言われる通り, 疑問に思ったことは何事にも積極的に行う姿勢の重要性が必要だと思いまた。臨床側の信頼性を高めていくためにも, 検査技師はただ言われたままにやればよいと言う受け身の姿勢を変えていくことの必要性が身にしみました。本当にありがとうございました。

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