05/09/12
■ 緑膿菌でのIPMとセフェムの誘導耐性
【質問】
 私, 350床ほどの病院に勤務しております検査技師です。緑膿菌の誘導耐性について御教授下さい。

 BBLのディスクを用い, NCCLSの判定基準にそって感受性を行っていますが, 時々, 緑膿菌でIPMとセフェム (特にCTX) で誘導耐性を見かけます。IPMはβ-ラクタマーゼを誘導し易いと読んだ記憶がありますが, 何故でしょうか??? その文献には理由が載っていませんでした。

 また緑膿菌の薬剤感受性試験を行う上で, β-ラクタム剤はIPMの近くに配置するべきなのでしょうか??? また誘導耐性が見られる場合の判定は耐性 (R) としてよいのでしょうか??? 

 薬剤感受性の判定が, 試験する薬剤の配置で変わってくるとなると, 今後どのように検査を進めてよいのか分からなくなってしまいます。参考文献などがありましたら, 併せて御紹介頂けると幸いです。不躾な感じがおありかもしれませんが, よろしくお願いします。

【回答】
 IPMなどでβ-ラクタマーゼ (メタロβ-ラクタマーゼ) が誘導されるとは, 被検株が既に当該耐性プラスミドをもっていることに他なりません。この被検株は, インテグラーゼ遺伝子の存在下にインテグロン構造をもち, メタロβ-ラクタマーゼ (IMP1タイプ) を発現している可能性があり (クラス1 インテグロン), さらに耐性プラスミドのその下流にはトランスポザーゼ様遺伝子(orf513)も併せて存在しているものと考えます。従って, アミドグリコシドやSTなどの耐性化 (多剤耐性化) も進んでいるものと推察致します。試みにGMまたはAMKなど, およびSTに関しても, その感受性を確認されたら如何でしょうか。ある施設で分離されたP. aeruginosaとS. marcescensで, クラスBの, 遺伝子タイプの明確な株の感受性をMIC法 (BDフェニックス)で確認したところ, IPM, MEPMのみならず, アミドグリコシドおよびSTの耐性化などを観察しています。なお, 試験方法についてはCLSI(NCCLS)文書の記載に従い, その結果を報告して構わないと考えます。CLSI文書には特にコメントはありません。センシディスクはCLSI法に則っています。また, 他にディスクの配置など (考慮を促す内容) に関する報告を確認していません。インテグロン, インテグラーゼに関する情報は, 感染症研究所ホームページの耐性菌情報 (IASR) に掲載されていますことを申し添えます。

(日本ベクトン・ディッキンソン・武沢 敏行)

【回答への追加】
 全米微生物学会 (ASM) の臨床微生物部門 (Division C) はメールでの意見交換の場を提供していますが, 8月12日にイスラエルの医師から下記のような質問がありました。

We have just isolated a strain of Pseudomonas aeruginosa resistant to meropenem. By disk diffusion we observe a blunting effect with cefepime and piperacillin-tazobactam disks neighboring the meropenem disk. Is the mechanism derepression of some beta lactamase and how should we report sensitivities to beta lactam antibiotics?

(meropenem耐性の緑膿菌を分離しました。ディスク法でmeropenemの傍にcefepimeとpiperacillin-tazobactamを置いたところ, blunting effect・・・効き目がなくなる効果が観察されました・・・)

これに対して, 様々な見解が提供されています。

・It could be an inducible carbapenemase class A or D, or a strain with OprD(-) and hyperexpression of MexAB-OprM.

・It could be due to metallobetalactamases.

・It is a classic AmpC. Carbapenems are strong inducers of these enzymes, but are not hydrolyzed by them. ・・・・Anyway, almost 90% of our P. aeruginosa show antagonism effect between carbapenems and other beta-lactames (especially 3rd gen Cephs), but we do not edit the results.

・All P. aeruginosa are uniformly AmpC positive, Meropenem being an excellent inducer of the enzymes, hence the blunting effect. 

どうも, “AmpC説”が有力で, 議論に参加したほぼ全員が最終的に納得したようです。

(琉球大学・山根 誠久)

【質問者からのお礼】
 お忙しい中, ご回答下さったことに大変感謝いたしております。自ら勉強不足を恥じる気持ちもありますが, このウェブでは質問させて頂くチャンスを与えて下さるので本当に有難く思います。今後も是非, 先生方のお力をお貸し願えることを切に希望致しております。有難うございました。

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