05/08/12
05/08/15
■ 採血における手袋の消毒法について
【質問】
 病院の採血室に勤務している臨床検査技師です。いつも拝見しており, また, 幸運にも何度か回答して頂き, 日々の業務で大いに役に立っております。

当院でも技師が採血時に手袋を使用して採血することがだんだん普及してきています。採血のシフトについている時間は, 採血管の準備などは行わず, 採血行為のみに専念しています。その際, 患者さん毎に手袋を交換して業務を続けることは時間的ロスやコストの点から取り組みにくく, 代わりに消毒用エタノールに塩化ベンザルコニウムやクロルヘキシジンなどが含有された擦り込み式の速乾性手指消毒液を使用しています。使用中にできるピンホールも考慮し, 一定時間毎の手袋交換を行っておりますが, この方法で何か問題はないかお教えください。

【回答】
 “問題はないか”という質問ですが, “問題はある”と思います。手袋を交換しないで, その代わりにエタノールなどの消毒薬を使う・・・消毒薬を使う目的は恐らく, 血液を介して感染する微生物に対してだと思うのですが, B型肝炎ウイルスにエタノールは有効でしょうか??? 無効の筈です。では何故, 敢て, エタノールなどの消毒薬を使うのですか??? 単に患者さんへ安心感をもたすのが目的ですか???

 私の検査室では現在, 一人一人の患者さん毎に手袋を交換しています[http://www.hosp.u-ryukyu.ac.jp/labo/koe/glove.html]。採血の際, 手袋を装着するのは, 採血を担当する医療側のスタッフを守るためです。手洗いもしないで, 同じ手袋を延々と装着している施設もあります (手袋のなかは汗で一杯)。患者の側からすると, どれ程の期間, 同じ手袋が装着されているのかさえ分かりません。手袋の外 (患者側) と内 (医療側) は, 相互に隔絶されたまったく違う世界なのです。質問者も述べているように, “患者さん毎に手袋を交換して業務を続けることは時間的ロスやコストの点から取り組みにくく”という事情は理解できます。でも, これって, 医療側の言い訳ですよね。時間がない, 経費がかかる・・・昨今の流行り言葉,“患者中心の医療”を実践されるのでしたら, いくら時間がかかろうと, 経費がかかろうと, 患者に必要なものは提供すべきではないでしょうか。

(琉球大学・山根 誠久)


【質問者からのお礼】
 今回もまた, 迅速かつ的確な回答に, 心より感謝しております。以前, 2004年11月19日付けの琉球大学医学部附属病院ホームページの「患者様の声」を拝見したおり, いまだ完全には手袋装着が浸透していない採血現場に対して, 貴院では既に患者毎に交換していることを知り, 感嘆の声をあげておりました。今年1月4日付けの厚生労働省通達により, 真空採血管で使用されている“ホルダー”が患者毎の使い捨てになりますが, 手袋の件も同様に使い捨てにするべきなのですね。ありがとうございました。


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