06/01/17
06/01/20
■ 細菌の継代と凍結保存
【質問】
 6月頃質問をメールさせていただいたのですが, お返事がいただけていないので再度お送りいたします。

 私は現在, 化粧品メーカーで化粧品の効果効能や安全性, 抗菌性などを評価する部署で働いておりますが, 細菌の継代・凍結保存についてお聞きしたく, メール致しました。

 当社では, 試験に用いる細菌を?80℃で凍結保存しております。継代する場合は液体培地 (SCD培地) で1〜2日間培養し, 終濃度が10%になるようにろ過滅菌したDMSO (※) を加えて1 mlずつ分注してから?80℃で凍結保存しております。現在, この時の培養時間は適当に設定しているのですが, どの程度まで培養するのが継代および凍結保存に適しているのでしょうか。すなわち, どのくらいの細菌濃度になるまで培養すればよいでしょうか。また, 対数増殖期, 定常期, いずれの状態の菌を凍結保存する方が適しているのでしょうか。ちなみに, 用いている細菌は黄色ブドウ球菌, 大腸菌, 緑膿菌などです。よろしくお願い致します。

※なお, 以前勤めていた会社では, 細菌の凍結保存にはグリセリンを使っておりましたが, 現在の会社ではDMSOを用いています。細菌の凍結保存時にはDMSOとグリセリン, どちらを混ぜる方がいいのでしょうか。よろしくお願いします。

【回答】
 細菌の凍結保存時に使用する分散剤は, 保存する菌種, 保存方法によっても若干異なります。一般に細菌保存にはDMSOは用いませんが, 藻類やProteusの変形体保存には使用されるようです。通常の細菌保存に使用される分散剤にはグリセリンが多いようです。しかし今回の質問で, 保存する菌種は黄色ブドウ球菌, 大腸菌, 緑膿菌ですから, 貴社で実施している保存方法は煩雑と考えます。これらの菌種はいずれも発育旺盛な菌種であり, 極端に言えば単なる滅菌水や生理食塩水でも乾燥を防げば1年間は室温で保存可能な菌種です。また大豆ペプトンなどの寒天培地に穿刺して乾燥を防いで保存する方法でも, これらの菌種は長期保存が可能です。現在, 貴社で実施している保存方法, SCD培地で前培養した液にDMSOを添加する方法は培養後48時間を経過した菌株になりますので, 死滅期の細菌細胞が多数を占めている可能性があります。定常期の細菌細胞を保存するのが望ましいので, 現在の方法で実施する場合には18時間培養した菌体を保存することを勧めます。簡便で, より一般的な菌株の凍結保存法は, 保存する菌株が発育する適当な寒天培地で一夜培養して, 10%スキンミルクまたは15%グリセリン加培地に濃厚に懸濁, 密栓して凍結保存します。

(琉球大学・仲宗根 勇)


【質問者からのお礼】
 大変ありがとうございました。参考にさせていただきます。


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