■ 細菌学で用いる英単語の和訳 | |
【質問】
突然メールを差し上げ失礼いたします。私は食品機械装置の会社で広報を担当しております。先日,「Spore Inactivation on Cocoa Beans」という論文の翻訳をしました。「カカオ豆に付着する胞子の不活性化」という日本語のタイトルになったのですが, その中に出てくる用語の日本語が一般的に使われているものなのか確信がもてず, 専門の方に質問できればと思いメールしました。こちらのサイトは単語を検索している最中に見つけました。 実験に関するレポートなのですが, そこでは Bacillus stearothermophilus という菌が使われました。試験方法の説明は以下のような一文で始まります。 “Different batches of raw cocoa beans were first tasted for vegetative mesophile and thermophile germs and for mesophile and thermophile spores.” その翻訳は「最初に生カカオ豆の様々なロットで, 中温菌, 好気性高温菌, 中温胞子, 好熱胞子を調べた。」となりました。“vegetative mesophile and thermophile germs and for mesophile and thermophile spores”に対する翻訳は, 「中温菌・好気性高温菌・中温胞子・好熱胞子」で良いのでしょうか??? 門外漢の質問で恥ずかしい限りですが, 他にどなたに聞いたらいいものか分からずにおります。ご回答頂けましたら大変助かります。お忙しいところ恐縮ですが, よろしくお願い致します。 【回答】
それからもう一点の,“Different batches of raw cocoa beans were first tasted for vegetative mesophile and thermophile germs and for mesophile and thermophile spores.”ですが, 「最初に生カカオ豆の様々なロットで, 中温菌, 好気性高温菌, 中温胞子, 好熱胞子を調べた」と訳されていますので, (be 動詞の後の tasted はtested の誤植でしょうか?) ご確認ください。 さて専門用語についてですが, ここでは有芽胞の Bacillus 属菌についての記述である可能性が高いと考えられますので, 以下のように概説します。 一般に芽胞は「生存条件の悪いときの一種の耐久型」で, 熱, 放射線, 消毒剤などに抵抗性が強いものですが, 生存条件が良くなると普通の栄養型に復元するのです。この「栄養型」のことを“vegetative”と表現します。また30℃〜43℃くらいの範囲で発育する菌のことを「中温細菌」“mesophile”と呼称します。特にBacillus 属菌に多いのですが, 50℃〜90℃くらいまでの温泉などに生息する細菌を「高温細菌」“thermophile”と言います。なお“germs”ですが, 胞子とか, 芽胞という意味もありますし,“germination”という「発芽」を意味する用語もあります。ここでは「病原菌」または単に「細菌」ということで宜しいと考えます。ということで: (1)“vegetative mesophile”は「栄養型中温細菌」
としてみましたが, 如何でしょうか??? 以上, 簡潔にお答えしました。 (信州大学・川上 由行)
【質問者からのお礼】
以前, 質問させていただいた件について回答を頂き, 誠にありがとうございました。すぐに返信をと思ったのですが, 慌しい業務のなか, 頂いたメールが見つからず, 本日お返事する次第となってしまいました。ご連絡が大変遅くなりましたことをお詫び申し上げます。 翻訳についてはいろいろな方からアドバイスを頂きました。問題の単語については, 弊社でお世話になっている会社の方の翻訳を最終的に使わせて頂くことになり, 校正を終了いたしました。突然の不躾な質問にも拘わらず, 快くアドバイスを頂き, 大変感謝しております。これからのご健康とさらなるご発展をお祈り申し上げます。 |