06/03/06
06/03/08
■ サルモネラ菌の前培養と増菌培養
【質問】
 ○○食品 品質管理室の●●というものです。当社では冷凍の“焼きおにぎり”なども製造しており, この“焼きおにぎりのサルモネラ検査法”についてご質問させていただければと思います。

 当社の検査では, いままで検体の10倍希釈液を作り, そのまま0.2 mlをDHL平板に塗沫してサルモネラを検査していました。しかし, この方法では検出が難しいであろうと思い, 培地メーカーさんに相談したところ, 「緩衝ペプトン水で前培養し, そのままDHLで画線塗沫でもいいので, 菌を増やしてから検査するよう」アドバイスされました。もちろん, 前培養して増菌培養, 次にDHLという方法が「公定法」だということは十分承知しているのですが, なにぶん, この方法では時間がかかるのと, もともと一般細菌も10個/gramレベル未満の衛生度なので, できればペプトン水とDHLで検査したいと思っています。

 そこで質問なのですが, このペプトン水, 次にDHLという方法で本当に大丈夫か, 考えられる問題点などがありましたらお教えていただければと思います。

【回答】
 冷凍の“焼きおにぎり”は冷凍食品です。冷凍食品規格基準の加熱後摂取冷凍食品の成分規格が「冷凍の“焼きおにぎり”」に当てはまると考えられます。成分規格として, 生菌数は検体1 gramにつき100,000以下で, かつ大腸菌群が陰性でなければならないと記載されていて, サルモネラについては記載されていません。サルモネラの汚染は鼠属昆虫や従業員からの糞便汚染が多いと考えられているため, 由来が同一で, しかも検査が簡単な大腸菌群が糞便汚染の指標とされていると推察します。ですから, 貴社で行われているサルモネラ検査はあくまでも自主検査 (貴社がいろいろな側面から妥当と考えた方法を用いた検査) という位置付けで行われていると考えられます。考えられる問題点としては, 一般生菌数が低い食品を製造している現場では, 最終製品のサルモネラ検査よりも, 従業員のサルモネラ保菌や製造環境中のサルモネラ汚染の有無を定期的にチェックする方が重要と考えます。最後に, 質問の中で「ペプトン水とDHLで検査したい」と書かれていますが, 「緩衝ペプトン水で前培養し,そのままDHLで画線塗沫でもいいので, 菌を増やしてから検査するよう」とは, どこが, どのように異なるのか, 回答者には理解出来ませんでした。

(日水製薬・小高 秀正)

【追加質問】
 先日,「サルモネラ前培養, 増菌培養について」という質問をさせて頂きました。早速の回答, ありがとうございました。

 さて, 私の文章力が足りず, 「緩衝ペプトン水で前培養し, そのままDHLで画線塗沫でもいいので, 菌を増やしてから検査するよう」という表現が分かりにくく, 申し訳ありませんでした。私がお聞きしたかったのは, “緩衝ペプトン水の前培養のみで, 増菌培養をしなくても問題ないのか”ということですが, この点についても, もしよろしければお教え頂ければと思います。

【回答】
 食品衛生検査指針 (2004) によりますと, 食品加工によってサルモネラが損傷, 休眠状態, または少数汚染であることなどが考慮されるため, 選択増菌培養に先立ち, 菌の活性化, 修復および増菌の目的で前増菌培養を行うことが望ましいとあります。回答者は, 前増菌培養後に分離培地へ画線塗抹した場合, サルモネラをうまく単離できず, 選択増菌培養後 (サルモネラ以外の雑菌を抑制する) サルモネラの単離がうまく行ったという経験をしています。質問によりますと, “菌数が非常に少ない”ことを強調していましたので回答が難しいところですが, 「増菌培養しなくても問題ないのか」という質問に対しては「問題がある」という回答になります。

(日水製薬・小高 秀正)

【質問者からのお礼】
 サルモネラ前培養, 増菌培養についての質問をさせて頂いた○○食品品質管理室 ●●です。お忙しい中, 何度もお答え頂きありがとうございました。教えて頂いたことを参考に検査方法を見直したいと思います。


戻る