■ サルモネラ菌の保存方法について | |
【質問】
はじめて質問します。どうか教えてください。 現在コントロール用のサルモネラ菌を保存するのにTSA培地を試験管で斜面にしたものに植えて冷蔵庫内で保存しています。週一回の植え継ぎを行うタイプと月一回の植え継ぎを行うタイプの菌を保管しており, 毎週植え継いだサルモネラ菌をコントロールに使用しています。サルモネラの検査方法は, 検体をリン酸バッファー, またはLB培地で35℃, 18〜24時間増菌培養後, 検液1 mlを9 mlのTTB試験管培地に植え, 35℃, 18〜24時間培養後, 1〜2テストキットを使用しています。陽性コントロール用のサルモネラ判定がうまくでないことが月日の経過とともに起こってきますので, その都度菌の更新をしています。“菌の移動により判定する試験キット”なので, コントロール菌のべん毛が機能しなくなっているのでしょうか(最初に菌を購入し, 起こした後, 小分けして−80℃で保管するのがいいと聞きましたが, −40℃程度の保管庫しかありません)。質問は・・・ (1) 保管方法が原因なら, 冷蔵保存でもサルモネラ菌の特徴を損なわれない方法があれば教えてください。 (2) サルモネラ菌のべん毛など, 機能 (特徴) を回復させる方法があれば教えてください。 (3) −40℃でも保存可能なら, 保存する際の菌をどのような状態にして保存するのか教えてください。 (4) サルモネラ菌自体を保持するより, 陽性コントロールや陰性コントロールのいらないタイプの信頼できる試験方法などがあれば教えてください。よろしくお願いします。 【回答】
(1) 冷蔵保存ではどうしても継代の回数が多くなりますから,変異は起きやすくなると思います。本来の性状を保持した菌株で検査したいのであれば, ご質問にもありますように,購入後の菌を大量に培養し, 小分けにして, 凍結保存することが勧められます。そして一度解凍して使用した菌株の保存や再使用は避けたほうが良いと思います。 (2) 一度なくした鞭毛などの機能を回復させるのは難しいと思いますが,運動性 (鞭毛) の保持ということについては,固形培地上の菌を植え継いで行くのではなく,半流動培地で遊走して発育した, 運動性の強い菌株を選んで保存することによって,冷蔵保存でもある程度運動性だけは保てるかもしれません。ただしその他の性状については不明です。 (3) 一般的に凍結温度が低いほど, 長期保存が可能とされますが,サルモネラ菌などの腸内細菌であれば_40℃の凍結保存でも十分に保存は可能だと思います。凍結する際の媒体 (分散剤) としては10_20%スキムミルクや市販の菌株保存用バイアル (マイクロバンク) などがあります。この保存用バイアルには25個のビーズが含まれ,必要時に一個ずつ取り出して使用出来るようになっています。また使用説明書には, 生存期間の目安として,_20℃で18ヶ月,_70℃で3年 (最長5年) と記載されています。自家調整したスキムミルクで保存した場合には,保存容器を冷凍庫から取り出してすぐに, 少量の滅菌水を加えて表層部のみを溶解し, 菌液を取り出します。残りはすぐに凍結しておけば, 1本の保存容器でも反復して使用することが出来ると思います。その他の保存方法については,この“質問箱”の中にいろいろな先生方の回答がありますので参考になると思います。 (4) 私は病院で患者さんの検体検査を行っていますが,ご質問は食品関係の試験方法だと思います。従って, 的確なアドバイスをすることが出来ません。市や県の衛生研究所の方などにご相談されたらいかがでしょうか。いろいろなノウハウをお持ちだと思います。 (玉名中央病院・永田 邦昭)
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